Yukiko

ヒトラーの贋札のYukikoのレビュー・感想・評価

ヒトラーの贋札(2007年製作の映画)
4.5
2022年4月1日
『ヒトラーの贋札』  2007年ドイツ・オーストリア制作
監督、ステファン・ルツォヴィツキー。

1936年、第二次世界大戦前のドイツ。
サロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィックス)は
ユダヤ人。
贋造紙幣や旅券偽造などを生業としていたが、ナチスに
捕まり、強制収容所に入れられる。
1939年、絵が上手なことが認められ、絵を描くことで待遇が
良くなり、その5年後、ザクセンハウゼン収容所に移される。
そこでは、ソロヴィッチを逮捕した親衛隊のヘルツォーク
(デーヴィト・シュトリーゾフ)が上司となる。
そして、その収容所の一角で、偽札づくりを強制させられる。


親衛隊主導による紙幣贋造「ベルンハルト作戦」の話し。

収容所でソロヴィッチと仲間だったアドルフ・ブルガ―
(アウグスト・ディール)の証言で、フィクションも交えて
映画は作られた。

ブルガーはユダヤ人の印刷工。
映画の中ではうまく印刷できない風を装って偽札作りに反対
をしている。
ソロヴィッチや周囲の人々は、終戦まで生き延びることに
必死なので、ブルガーの正義は皆からよくは思われていない。

ブルガーと皆との確執。
ソロヴィッチの技術の高さは、ヘルツォークから認められ、
収容所の中でも待遇が良い。
その収容所に結核患者が一人混じる。

ソロヴィッチ役のカール・マルコヴィックスさんのなりきり
演技は見応えがあった。
対する、ブルガー役のアウグスト・ディールさんの正義を
貫くまっすぐな目線!!
キリっとした目線は、くじけないぞ、負けないぞと言って
いるよう。
その葛藤が伝わってくるようだ。

親衛隊のそれぞれの気持ちと行動も、この時代を彷彿と
させる。
中でも、ヘルツォークの奥さん役の能天気な態度と言葉は
親衛隊に関わる人や家族がどれだけ天下泰平だったかを
伝えている。
というよりも、ヘルツォークがユダヤ人の囚人を自宅に招く
行為に、奥さんは戸惑いと混乱を感じたのかも。

ラストの収容所の中での一波乱。
壁ひとつ挟んで、偽札作りは優遇され、他の収容所仲間とは
違った待遇だったことがありありと分かる一場面。
「俺たちはユダヤ人だ」と腕のナンバリングを見せなければ、
親衛隊仲間と勘違いされて、他の収容所仲間から殺されかね
なかったのよね。

ソロヴィッチさん、悪銭身につかず・・・ですな。

見応えありました。
Yukiko

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