前篇で渡辺が主に語るのは少年時代。生まれ育った王子の町の人々、学校をさぼって見た映画、空襲、そして敗戦。饒舌な渡辺がふいに黙ってしまうのは、若くして亡くなった憧れの兄・優について語った直後。「生きてたらすごいと思うよ、うちの兄貴はきっと ……」。映画や演劇を愛した兄の思いを受け継ぐように、渡辺は映画の世界へと向かっていくことになる。
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