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シュガー・ラッシュ:オンラインのdeenityのレビュー・感想・評価

3.0
※前半は好評させていただきますが、後半になるにつれて酷評させていただいておりますので予めご了承ください。

ということで、事前に予習もバッチリの状態で鑑賞してきました。
相変わらずのラルフとヴァネロペのコンビは健在で、前作から6年後ということで仲をさらに深め、親友になった二人。営業中は自分の役割を果たし、営業後には共に時間を過ごすという日々を満足しています…片方は。
一方ヴァネロペは少し退屈な日々を過ごし、別に今の生活が嫌なわけではないけど、という悶々とした思いを抱えつつも、親友のラルフに話したとて共感はされず、それどころか理解もされない。さらっと彼女は「価値観なんて人それぞれ」と言いますが、かなり大切なテーマに触れる作品なのだろうと期待がどんどんうなぎ登りでした。

しかしトラブルを機に、二人はインターネット世界へ。事前情報で知っていましたが、この世界感は本当に素晴らしかったですね。ディズニーヒロイン大集合のシーンは本当に贅沢で、これを可能にさせているのはディズニーブランドならでは。歌のくだりとかはあるある過ぎて笑えてしまうし、このシーンを見るだけでも価値があります。
加えてネット世界の表現が実に素晴らしい。「amazon」「楽天」などの見覚えのあるサイトにワクワクしつつも、ネットでの検索やポップアップ広告、いいねやコメントまで、新鮮で斬新な表現には素直に驚きと感動でした。ここまで仕組みをわかりやすく、それでいて面白く表現できるのはさすがはディズニー。恐れ入ります、と言ったところ。この時点で世界観に評価4は付けられるくらいです。



ただ、この作品のテーマになってくる価値観や夢という問題。それ単体で見ればこの作品はそこまで悪いものとは思いません。むしろ、最近のディズニーでも扱われる現実の厳しさというか、定石通りではないところは心に響くものはあります。
しかし、この作品をただの娯楽だけの映画ではなく、メッセージ性を持った教訓映画としているならば物申したい点はいくつもあります。

とは言え、まだギリギリ許せる点がいくつかあります。
まずあのラルフのストーカー気質は何ですか。前作を予習した際にヴァネロペの自己中でわがままっぷりには確かにイラッとしました。ただ、あくまでやってるのは子どものやることなので「嫌なガキんちょだ」で済む話。しかし、前作悪役ながらも良い奴だったラルフとのバランスをとるかの如きラルフのストーカーっぷり。正直気持ち悪いです。

ポップアップ広告のくだりも欠かすことのできないシーンですね。スパムリーというキャラクターは悪いやつではないですね。ただ、スパムとはあくまで迷惑行為であって、良心的に捉えていいものとは限りません。それを理解できていない子どもが本作を見た場合の影響というのはいかほどなのか、少し怖い気もします。

ただ、どうしても許せないのはこの作品のテーマにも関わる部分で、人それぞれ価値観が違って生き方を選ぶことができるのは悪いことではありません。自由です。
しかし、その選択をするためには多くの犠牲が出ることもわかっているのでしょうか。前作であった設定として、次の日までにゲーム世界に戻らなければ故障扱いになりクラッシュされるという設定はどうしたんですか。ラルフは相も変わらずヴァネロペのためにゲームを空け、何時間も戻らない。それでゲームがクラッシュしたら他の仲間をどうするつもりですか。ヴァネロペは前作でも不具合キャラとして選ぶことができない時期がありました。だからまた選べないとしても、そこはまだ見逃せる点。しかし、ヴァネロペのあの発言。「私以外にも16人のレーサーがいるから大丈夫」数もセリフも正確には覚えてませんが、この発言、どういうつもりで言ってるんですかね。自己中過ぎることこの上ないと思います。
確かに自分の夢があって、その実現のために勇気を持って選択することは間違いではありません。友情というのもずっとそばにいることだけが全てではありません。しかし、自分の夢の実現のために、多くの仲間を犠牲にして平気な顔で夢を叶えることって正しいんですかね。夢を叶えることは素晴らしいことです。しかし、私は人に散々迷惑をかけてまで自分一人の夢を叶えることを肯定的には考えることはできません。もしそんな人がこの先どんどん増えていったら、多くの迷惑を被る人が増えていくと思います。特に子どもは危険です。純粋にこの作品を吸収したとしたら。ディズニー作品とはいえ、あまり子どもに見せたくない作品でした。

この作品がメッセージ性を含む作品であるならば、そのリスクもしっかり考えるべきだと思います。個人的にはそこまで考えて作っているとは思えず、世界観やテーマだけで手放しで評価できる作品とは思えませんでした。
これも一人の価値観と言われればそれまでですので、もしそう思われない人の気分を害してしまったら申し訳ありませんが、そのまま作品を鵜呑みにせず、わかってくれる人がいたらいいなと思います。
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