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シュガー・ラッシュ:オンラインのblacknessfallのレビュー・感想・評価

4.3
ディズニーなんか終わってると思ってたんだよ。旧態依然のモラル規範はスピルバーグが立ち上げたドリーム・ワークスの"シュレック"で徹底的にコケにされたし、ピクサーはディズニーが画けなかった細やかやな感情や等身大の人々が共感しやすい身近な教訓を嫌らしくない形で物語に落とし込んだし。

そんな風に思ってたから全然チェックしてなかった。
たがら地上波でやってたシュガーラッシュを観た時はびっくりした笑
こんなピクサーっぽい哀愁と優しさを滲ませ、シュレックみたいに既存のフォーマットの楽しいパロディを連発する深くおもしろい映画を作っていたとは!
それから、毎作チェックだチェックー( ゚Д゚)てモードにシフトチェンジ笑

ディズニー再注目の切っ掛けになった映画の続編ならレビューあげるのが礼儀ってもんだよね笑

これ、おれは本当に楽しめたけど、訴求対象であろう子供たちにはちとハードルが高い話に思えた。

新しい居場所を見つけて自立しようとする女の子と寂しさから依存度を高めて相手を束縛してしまう悪癖を身につけてしまったおっさんが更正する話なんだよ、完全に大人向けだと思う笑

まあ、最近のディズニーはヒロインが誰にも依存せず、周囲の思惑や目線に縛られずに自分らしく生きることを選択するようになってるので、ヴァネロペがネットという大きく開けた世界に胸をときめかせて新しい仲間を得て自分の生き方を見つける展開はもう安定の心地好さだった。

それだけなら、いくら恩がある作品の続編でもレビューまで書き気にならなかったんだけど、ラルフの話というか気持ちの動きに感じ入るものがあったから書くことに。

ラルフは前作でヴァネロペからヒーローと慕われ友情を結び幸せな日々送ってたんだけど、ネット世界に適応しそれに夢中になっていくヴァネロペが自分から離れていくように見え、ヴァネロペの選択を否定し自分と元の生活に戻るよう彼女に有形、無形の圧力をかけていく。

これはショックだったな笑 前作では気が優しく力持ちを地で行くナイスガイだったのに、、今作では「ヴァネロペのため」ってことを建前にして自分の依存心を満たすことしか考えられなくなった毒親とかDVオヤジみたいになっちゃって、、笑

男の病理として非常によく分かるからすげぇ痛々しいんだよ。相手にとって頼れる自分でいることでしか自信が持てなくて、知らず知らずに頼ることを強要して相手の意思や考えを尊重できなくなる。
建前にしがみついて自分の不安と執着心で相手を苦しめてることが理解できない。
まあ、よくぞ子供向けの作品でこんなヤバい感情を画ききったな、と。

他には、ディズニーは色々傘下にしたからマーベルの面々やスターウォーズとのクロスオーバーはディズニー嫌いマーベル好きとして複雑な思いはあるけど、素直におもしろかった笑
やっぱり単純に異世界の遭遇はワクワクする笑

それと、歴代ディズニー・ヒロイン達とヴァネロペが出会うシーン。
メタな語り口で自分達がヒロインであること確認しあい、男や周りに支えられないと存在できないイメージを被せられてることまでぶっちゃけてるのはおもしろかった笑

で、このシーンで気づいたんだよ!何故?ディズニーは再生したのか。
この過去の自分達をハッキリと否定する勢いのセルフパロディ、強烈なんだよ。手法はドリーム・ワークスと同じことをやってるだけなんだけどインパクトの大きさが全然違う。
本家にこれをやられたら他社は太刀打ちできないよね、現にドリーム・ワークスは失速したし。
この文脈だとディズニー褒めてるみたいだけど、実はディスるつもりで書いてるんす、おれ。

要する過去に自分達が発したメッセージや定型をあれだけ躊躇もなく豪快に茶化せるってことはディズニーは送り出した作品のメッセージを何一つ信じてないってことなんだよ!
その時々の世に望まれる価値規範、ヒロイン像を提示してきただけ。だから昨今打ち出してる自立したヒロインやその物語に託した理想も、当然、何一つ信じちゃいないんだよ。
外に向けて夢や理想を語りながら自身が膨れあがることしか頭にない、その為なら自分さえ売り払う。ディズニーって暴走した資本主義その物なんだよな、象徴と言ってもいいかも笑

作品は崇高だけど会社は下衆。そーゆー意味でディズニーとは何かってことを凝縮した傑作だと思う、シュガーラッシュ:オンラインは。

ディズニー映画は好きだが、ディズニーは大嫌いだ。
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