Kuri

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring YearsのKuriのレビュー・感想・評価

3.5
自分は90年代ブリットポップ時に起こった何度目かの再評価+アンソロジーシリーズでビートルズの歴史を理解したので、この作品に出てくる事実はほとんど知ってはいます。

この作品ならではの切り口は彼らのライブバンドとしての側面に特化して、特に初期に顕著な彼らの瑞々しいアイドル性を際立たせていること。
それによって知識としてだけでなく劇場で体感的に見る意味がある、パッケージ作品よりライブ体験が重視される時代に沿った纏め方になっています。

とにかく、4人が演奏してるだけで、とびきりかっこよくて可愛いくて、キャーキャー言いたくなってしまいます。

黒歴史とも言いたくなるような"ゲットバック"でのルーフトップセッションでさえ、この作品の視点を通せば、"物語の終わりにまた4人で演奏できたよ、メデタシメデタシ"と、一つの美しい物語を締めくくるピースのように見えてきます。
彼らの歌詞のように、悲しい歌でも気分次第で楽しく響かせることができる。

歴史の断片を切り貼りすれば印象操作はいくらでもできるとも言えますが、それは野暮かもしれません。
個人的にはサージェントペッパーズよりも、ラバーソウル、リボルバーとホワイトアルバムがずっと好きですが、物語としては美しいし。

エンドロールでの"愛しのフリーダ"への言及にはニヤニヤ。ビートルズ関連では特に愛らしい大好きな作品なので。

避け難く断片的な編集になって少し欲求不満になってしまう本編を補うように、30分のシェアスタジアムライブが併映されてるのは、とても素晴らしい。
最後に演奏される"I'm down "は何度か見ている映像なのに、映画を見た後だとジョンが肘でキーボードをグチャグチャと弾き散らかす姿に今まで以上に感情移入して痺れてしまいました。

ビートルズを初めて知る人も、知りすぎてしまった人も、劇場で見れば必ず楽しめる作品になってると思います。
映画としては、これくらいの点数で。
Kuri

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