おなべ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのおなべのレビュー・感想・評価

3.6
冒頭、真っ暗闇の画面の中で轟々と鳴り響くオーケストラ。その後画面に映し出されたのは鼓動に合わせて収縮する剥き出しの心臓。中盤、不穏を煽る暴力的な楽曲と不気味な予兆。この辺りから異変が拡大し次第に狂い始めて行く。終盤、息を呑む程サイコ&ホラーチックな展開に…そして衝撃のラスト。“罪と罰”に艱苦する男と、父親を失った男の聖なる復讐劇。

監督は『ロブスター』で知られる《ヨルゴス・ランティモス》監督。個人的には以前の『ロブスター』のようにシニカル要素は感じられず、全く別ジャンル(サイコ・ホラー)に感じました。《ニコール・キッドマン》×《コリン・ファレル》は記憶にも新しい『ビガイルド』での共演。今回は医者の夫婦役として出演しています。

戦慄を煽る為の演出アプローチが独特で、カメラワーク・カット割り・BGM等、特殊でした。だから疑問の念と畏怖が同時に襲って来る感覚で、その都度新しい衝撃に打ちのめされては物語の行く末を追う感じ。特に恐怖の旋律を奏でるオーケストラは刺激があったなぁ。性描写に関しては『ロブスター』同様にしっかり描いています。物語全体を通して言える事ですが、監督は人間の醜さや本質を描くのに長けている気がします。

色青ざめて悄然と立つ家族、それを見つめる少年。嗚呼恐ろしや!
おなべ

おなべ