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荒野にてのshingoのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
4.0
少年と荒野と馬。これらの要素が揃った時点で名作の予感しかしない。そしてその根拠の無い予感は見事に的中してた。

本作の内容を簡単に説明すると一人の孤独な少年チャーリーが様々な試練を乗り越えていく姿を描いた青春ロードムービー。序盤は父親との良好な関係や競走馬ピートの世話を中心に描き暖かいムードに包まれる。だが中盤から一変し少年を残酷な展開が次々に襲う。そして物語が進むたび大切なものを失っていく。

この作品の見所はこの中盤からで、序盤で見せた無邪気な笑顔は消え徐々に危険な面を見せるようになる。万引きや無銭飲食、金を取られたとはいえ酔っ払いに対する暴行。綺麗事だけでは終わらない10代の少年のリアルな心情を見事に描いている。

そして物語の残酷な展開に反してどんどん美しくなる荒野の描写。まるでジョン・フォードの西部劇を観てるかのような壮大な風景。若くはコーマック・マッカーシーの小説の世界。この美しさは少年の境遇を考えると皮肉のようにしか感じない。

そんな残酷な展開にも決して弱音を吐かなかった少年だがラストのシーンでやられた。それまで何を失っても涙を見せることは無かった少年が最後の最後に見せる男泣き。この展開は予想出来たが分かっていても涙腺が緩む。序盤の少年らしい感情が戻る瞬間。こういうのはやっぱり反則。
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