とりさん

アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男のとりさんのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

アイヒマン捕獲に至る経緯はあまり語られる事はなかった中、戦後のドイツとイスラエルについての関係性と各国内の思惑をうまく絡めながら、アイヒマンをじわじわ追い詰めていく経緯が大変面白かったです。
自国で自国を裁く事の難しさを改めて感じました。

ナチス親衛隊であった人材が、戦後ドイツ国家の上層部に留まり続けナチス関係者に対し穏便な対応をしていた事について。

社会主義国家であったソ連に占領され、領土を二分させられた西ドイツ側にとって社会主義は憎むべき存在ですが、民主主義を掲げ復興する段階で社会主義者を極力混ぜない組織を一から作り直す余力もなく元ナチスを上層部に残した経緯もあり、ここら辺日本に似てるなぁと思いました。

映画の箇所箇所の各人物のやり取りも、どこか日本と共通するものを感じ、バウアー検事長の苦悩や「壁」の存在について理解できる日本人は多いんじゃないかと思います。
アクションもない全体的に地味な映画ですが、心情ややり取りなどじわじわ来る構成でした。出演者の演技が秀逸です。

今でこそ強制収容所や大量虐殺について周知されていますが、アイヒマン裁判の前までは殆どの人が不確かな噂程度の話で、ユダヤ人同士でさえ信じられていない事もあったんですよね。
アイヒマン裁判ものすごく重要な裁判です。

その後のアウシュビッツ裁判について当時のドイツでは評価があまり高くないようですが、資料としての貴重さやその後の「荒野の40年」演説などに続く伏線でありバウアー検事長の功績は大きかったと思います。

バウアー検事長について、ご興味ある方は下記資料をご覧下さい。

■フリッツ・バウアーと1945年以降の ナチ犯罪の克服
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/11-3/hondapark.pdf#search=%27%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84+%E3%83%90%E3%82%A6%E3%82%A2%E3%83%BC%E5%88%A4%E4%BA%8B%27

■『荒野の40年』――西ドイツ・ヴァイツゼッカー大統領の演説
http://www.obpen.com/essay/20120809_01.html
とりさん

とりさん