えいがうるふ

ガラスの城の約束のえいがうるふのレビュー・感想・評価

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)
3.0
愛しあう共依存夫婦と、その歪んだ家族愛に翻弄される子どもたちのサバイバルストーリー。

ちょっと頭のおかしい男女が出会い愛し合いお互いを危険に晒しながら痛々しくも幸せに生きる、あるいは野垂れ死にゆく話ならむしろ好物なんだが、そこに無力無抵抗な子どもが関わるとなると、母ちゃんとしてはどうにも心穏やかに観ていられなくなる。
このオヤジの場合、はじまりへの旅の父親と違って、そもそも本人の行動の起点が逃げでしかないのが何とも情けない。夢は語れどもその信念がグラグラすぎてお粗末。うちの父ちゃん変わってるけどスゴイ、どころか単なるダメおやじ。しかも成長した子どもたちの自立を妨げる過干渉ぶりが最低。この父親にとって子どもたちは、社会的に誰にも相手にされない自分が唯一マウントとれる存在であり、自分の無責任な夢想に耳を傾けてくれる貴重な存在だから、いなくなられては困るのだ。

実話ベースということで、後に当の子どもたちが良い思い出として語れるのなら他人がとやかくいうことは何もないのだろうが、実際にこんな生活を幼い子どもたちに強いていたのだとしたら、誰も死なずに全員がそれなりに真っ当な大人になれたのはただひたすら運が良かったからとしか思えず、とても拍手する気にはなれなかった。そもそも幼い子どもに親の不注意で大やけどを負わせておいて、それを家族の絆の証みたい美化されても。

役者陣の演技は皆素晴らしかった。特に子役の皆さんの熱演に星は全部進呈したい。