しろくま君

まともな男のしろくま君のネタバレレビュー・内容・結末

まともな男(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

まともな男というタイトルとは裏腹に、主人公がめちゃくちゃサイコパスな映画だと思って鑑賞してたら、割とどこにでも居るような男の悲劇だった。うん、これはまともな男です。良くも悪くも。

話の展開は、ありふれた日常の後味悪い話って感じ。もうどう転がってもハッピーエンドにはならない。それなのに、表面的なハッピーエンドで物語は終わっている。それが1番怖い。

これってすごい難しいテーマを、ものすごく見やすくそして観客に考えさせようとしてる映画だと思う。何が正解なのか、どうすれば誰も傷つかずに済んだのか。この映画についての議論はきっと楽しいと思う。そう思わせてくれる映画はとても貴重。

レイプって題材は死ぬほど難しい。そしてこれは、本当に起こったのかどうか事実は最後まで分からない。同意だったのか、無理やりだったのか。主観と客観では別の解釈になるし、被害者と加害者側の意見なんて真っ二つに分かれるに決まってる。今回は被害者側の意見が15歳の少女の意見だったので、さらに証言内容は曖昧で信じるに値する内容ではない。しかし、嘆き苦しみ泣きわめく少女を誰が疑うことが出来るだろうか。少女を守るために必死に嘘をついていた主人公は、本当に頭がおかしい人間なのか?

正直、酒に酔って嫌いな奴の車に突っ込んでセラピーに通っているという情報がやばいだけで、主人公は自分が悪者にならなければ、嘘で誤魔化そうとする人間味のある人物だったと思う。もし、本当にまともじゃなかったのなら酒の力に頼らずとも車をぶつけられたはずなのだ。でも、序盤にちょっとヤバいやつ感を演出したのは観客をミスリードさせるためだったのなら、完璧な演出。

あと、こんなに重苦しい話なのにカメラワークが良すぎ。オシャレ映画か?と途中で思ったりもしたが普通に重い話でした。

最後に全部バレて社会的に死ぬんだろうなと思ってたら、何事も起こらず終わりを迎えたのには驚いた。でも、主人公はハラハラして生きていくんだろうなと考えるとちょっと鬱。結構、主人公の人に感情移入しちゃってたので、心が痛かった。

子供のために嘘をつくか、大人として本当のことを言うか。正義はどちらだ?