oldmanSEヨK

ちょっと今から仕事やめてくるのoldmanSEヨKのネタバレレビュー・内容・結末

2.4

このレビューはネタバレを含みます

現在の職場の扱いに悩んでいたり、理不尽さを感じている勤め人が観たなら、もしかすると元気づけられたり、可能性を信じられたり、転職を考えたりするきっかけのひとつになるような自己啓発本的な効用は充分ある作品ではあったと思います。
逆に就活する人によっては逆効果かも(笑)

そんな感じで、観ている間はそれなりに楽しめたんですが、終わってみれば記号の塊だったように感じました。

会社がブラックというよりは結局映画で描写されていたのは、単純に性格上問題がある上司ひとりが象徴的な存在として…という。
その他、背景としての同僚(さりげなく社員が入れ替わってた方が「出入りの激しい会社」としてまだ面白かったかも)、優しい両親、楽園…

ですが、役者の熱演でかなり補われていたと思います。
福士蒼汰演じるヤマモトのイイ奴感はハンパないし、それをちょっと最初訝しむ工藤阿須加演じる青山の控え目な演技は自然でした。
吉田鋼太郎演じる部長、ハイテンションな演技で一歩間違えれば『帝一の國』のようなコミカルな演技と同じになりそうですが、シリアスに怖く演じていてベテランさを感じました。
その他、仕事は出来たけど結局裏切る先輩(黒木華)は一応主要キャラだけに少し複雑な設定になっていたり。真っ赤な口紅やさりげなく乱れた髪など下手でセンスのないメイクの演出は上手いと思いました(笑)
それでも黒木華が素材は美人なので、仕事に身体を使っているのかな?というミスリードを感じてしまいましたが、これは勘違いだったよう…

それなりに役者さんたちの力のある演技力で展開してましたが、それでも主人公青山が会社を辞める時がこの映画のピークでした。

そもそも一番大事な日、なぜヤマモトはその場から消えてしまうのか?
物語上は、おそらく海外に飛び立つリミットだったりとかの理由はあるのかもしれませんが…
彼を救うことが自分の救いにもなる、救えなかった兄弟の分身の筈だったんじゃないのか?
それまであんなに躍起になって救おうとしてきた筈なのに。
ヤマモトにとっても待ちに待った記念すべき日に違いなかったはず。
直後に会って話せば、わざわざ育った施設まで行って施設長(小池栄子)に長い説明をさせなくても、短くて済んだように思うのだけど。
クライマックス後に、あそこまでカラクリを引っ張る意味はあったのか?
ある程度二人の関係が進む上で、小出しに種明かししてても問題無かったのでは?

一番残念だったのは、ヤマモトが行き着く島が都合よく楽園過ぎる(笑)
あの地ならインフラや生活環境での大変な苦労も描写出来た筈。
理不尽な思いをしながら働くより、どんなに過酷な環境でも人が助け合って生きてゆく方が人間らしいじゃないか?というサジェスチョンを投げかけられる設定が出来たんじゃないかなぁ〜…あそこの描写は本当に惜しい。

途中でミスリード的に出てきた、パスタ屋でこちらを見て微笑む幽霊のような女性の顔が、唐突だっただけになんだか凄く怖くて脳裏に焼き付いてしまった(笑)
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