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新感染 ファイナル・エクスプレスのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった!ゾンビものは最早散々やり尽くされており、最近ではコメディにしたり捻りを入れたりと斜めから撮るような映画が多かった。その中で、真正面から王道に取り組み、しかもめちゃくちゃしっかりと面白いという凄さ。

展開は非常にスピーディーで(強いて言えばゾンビに会うまでがちょっと長い)、終始「ゾンビから逃げ続ける」というだけで余計なドラマが一切挟まらないのに、ずっとスリリングで目が離せない。新幹線の中でゾンビから逃げるという発想が面白いんだよなぁ。あの閉鎖空間の恐怖と安心感よ。

ゾンビの造形は奇をてらうこと無く王道で、でもド迫力。ダッシュ系ゾンビまじ怖い。特に終盤の列車にしがみつこうとする大量のゾンビのシーンは圧巻。トンネルで暗くなるとゾンビの動きが止まる設定も良かったなぁ。

キャラクターも全員しっかりと立っている。男たちは勇気があって格好良いし、女子供も足手まといになったりはしないし、悪役は心底クソ野郎。余計なドラマが挟まらないと先述したが、それぞれの関係や人間性は最小限のシーンで十二分に表現されており、その演出力が素晴らしい。主人公がこの闘いの中でしっかりと成長していく過程も最高。悪役は本当にクソなのだが、一歩間違ったら主人公もこうだったかもしれないと思わせる脚本の上手さ。娘のお陰で真人間に戻れて良かったね…!

感染しているのではと疑心暗鬼になった乗客たちがパニックになるシーンでは人間の愚かさと醜さがしっかりと描かれており、自分たちが助かるために主人公たちを見捨てた乗客たちが一斉にゾンビにやられるシーンの溜飲下がりっぷりが凄い。

一緒に逃げていた仲間たちが徐々に感染して離脱していく展開(しかも大概が自分が助かりたい悪役のせいであり避けられた感染)が本当に辛く、それでも仲間や家族を助けたいという思いに胸が熱くなる。最強のマ・ドンソク兄貴離脱シーンの胸熱っぷりといったらないし、ビビリだったホームレスが身を挺して女子供を守るシーンも良い。

特にラストに主人公が感染してしまったのはかなりショックで、泣き叫ぶ娘の声をバックに、消えそうになる自我の中で産まれたての娘を回想しながら微笑んで列車から飛び降りるシーンは、本当に今思い出しても泣きそうになる。からの、娘の歌の使い方。ストーリー展開が上手すぎる。

ハリウッドや邦画だったら暴力性を排し余計な恋愛ドラマなどを挟み込んで台無しにしていたと思われる、ゾンビ映画の傑作。邦題の駄洒落も原題の「釜山行き」よりもインパクトがあり、嫌いじゃない。
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