うるぐす

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのうるぐすのレビュー・感想・評価

4.3
最初に言ってしまうと、2017年の東京に生きている人と、そうでない人とではこの映画の位置付けは全く変わってしまうと思う。また、東京に自分の色を付けて生きている人とそうでない人とでも。
この映画が合わなかった人はそのままで良いんだと思うし、合った人はそれで手を差し伸べられたと思うならやっぱりそれも良いと思う。『恋人たち』の時と似たような気持ちになりました。


池松壮亮演じる慎二は、左目がほぼ見えない。右目しか見えないんですよ。つまり、世界を半分しか見えない。常に半分は暗闇。だからこそ、彼は夜空でさえも真っ暗ではなく青いと思う。でも、そう思えると常に嫌な予感もする。自分の目で見える半分の世界に常に期待を持って明るいが、「嫌な予感がする」のだ。それに対して石橋静河演じる美香は、ずーーっと世界を、都会を憎んでるわけです。両目で世界を見えるはずなのに半分も見えてないわけです。
これは何も美香に限ったわけではなくて、2017年現在、東京で住む、少なくない人がそうなんじゃないか、ってことなんでしょう。だから、多分この美香を受け入れることが出来ない人からしたら、この映画めちゃくちゃ嫌だと思うんですけどね。ひねくれてると思うだろうし。

この映画、ずっとひたすらに不安定なんですよ。東京に5年住んでて、未だにこの大都会に馴染めてないと思う僕からしたら、この映画で醸し出され続ける不安定感にもう酔って気分悪くなるんですよ。「やめてくれ、安定してくれ」って。松田龍平がとにかく儚く存在してて、田中哲司が本当に哀れで。ずっと不安定。4つ足から二本足になった時から人はずっと不安定なのかもしれないけど、観ていてそれこそ「嫌な予感」が止まらないんですよ。でも、安定出来ないじゃないですか。ずっと一定の温度の箱の中で飼われる亀じゃないんだから。

個人的に、美香と慎二が、美香の田舎から帰って来た時のエスカレーターから見えるルミネの看板の言葉のドンピシャ具合と、エスカレーターから降りた2人を引きの絵で撮った時の、都会に埋没してしまう様子の描写が素晴らしくて鳥肌立ちました。

生きて、恋してる。
ざまあみやがれ。
うるぐす

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