のりまき

ラスト・オブ・モヒカンののりまきのレビュー・感想・評価

ラスト・オブ・モヒカン(1992年製作の映画)
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この物語を最初に知ったのは世界の文学こども版みたいなカラー挿絵がガッツリ入った本だった。単純な子供だった自分はダイナミックな愛と戦いに涙したものだ。しかし涙しながらも違和感を覚えた。大河ドラマで細川ガラシャの最後を見た時と同じ感情だった。美談の皮を被った手前勝手な理屈は子供の鼻にさえ臭うものだ。ネイティブ・アメリカンの土地を奪っておきながらそれになり代わろうたぁふてえ奴である。
この白人によるアメリカ神話の創出から下ること100年余、撮られた本作。恋愛要素と代理戦争要素をクローズアップし益々しっちゃかめっちゃかに。けれどとてもとても興味深い。
令嬢たちの救出と搬送という形はそのままだが、コーラは混血で被差別対象という設定を失い、アリスの別の側面として存在している。コーラが強く柔軟なアメリカのヒロインであればあるほどアリスは旧態依然としたヒロインとなる。そしてクライマックス。ここで決断を迫られた彼女の描写。さすがマチズモの化身マン監督。彼女は選んだのでなく、選ばされた。白人の男たちに選ばされた。これが彼らの望むヒロイン。クワバラクワバラ。
原作に濃厚であった自然(≒ネイティブ・アメリカン)に対する憧憬敬意のようなものは薄れ、ヴェトナムの影がチラつく。フランス語を話す「悪いインディアン」の勇猛果敢な戦いぶりは推して知るべし。
蝋燭俳優DDルイスはこの役にのめり込み、きちんとサバイバル修行をしたそうな。長髪を靡かせて疾駆する姿は神々しく公開当時「本当にカッコイイんだよ」と鼻息を荒くする男の子に映画館行きを勧められことを思い出す。
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