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否定と肯定のpanpieのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.1
こんな裁判があったなんて!
第一ホロコーストを信じないなんてどういう事?
ホロコースト否定論て何?
初めて聞くその言葉に私の興味は掻き立てられ体調が良くなかったがどうしても観たかった作品。
なかなかレビューできなかった。



あらすじは上手くまとめられないのでフィルマのあらすじを読んで下さい。
割愛します。m(_ _)m






↓↓若干ネタバレあります。↓↓







何故歴史学者がホロコーストを否定するの?
あれだけ証拠の品が残されていたり写真も文献も生存者の証言もあるのにそれを都合よく解釈して自分は知名度のある人間というのを利用して難癖つけているとしか思えないアーヴィングにムカついた。
あー言えばこう言う口の減らない男だからこそ弁護士も雇わず自身を弁護する事を逆手に取ったリップシュタットの弁護団が冷静沈着で戦略を練りアーヴィングをギャフンと言わせたラストは観ていて本当に清々しかった!
特に視線も合わせず相手の口車に乗らない頭の良さはリップシュタットの様に感情的になりがちな私にとっても歯がゆく腹が立ち感情で言い負かしたい気持ちが先走り観ていて辛かった。
自分が訴えられている裁判なのに何も言えないなんて当の本人のリップシュタットの気持ちを思うと本当に辛かった事だろうと思う。

レイチェル・ワイズが本当に素敵だった。
彼女は自身もユダヤ系の両親から生まれこの役に適役と思える。
ダーレン・アロノフスキーとの間に男の子がいるそうで事実婚を経て破局、その後はダニエル・クレイグと結婚など私生活にも驚いた。
劇中で使用しているスカーフなどリップシュタット本人から借りたらしい。
何度も本人に会って親交を深めて役作りして挑んだらしい。

法律に関して全く疎いのだけどイギリスの裁判が他とは違い訴えられた方が真実を証明しなければならないなんて知らなかった。
学のあるアーヴィングがそれを逆手に取ってイギリスで訴えるなんて驚いたけれどリップシュタットを弁護する弁護団がまたやり方を知り尽くしていてあっぱれだった。
リップシュタットやアウシュビッツの生存者の証言はさせないなんてそんなの証明にならないでしょ!と私自身観ていて思ったけど証言の重箱の隅をつつく様なアーヴィングのやり口を分かっていた弁護団がお見事だった。
一枚も二枚も上手だったと言う事だな。

特にトム・ウィルキンソン演じるリチャード・ランプトン弁護士が素晴らしい。
アウシュビッツを訪れ正確な距離や物証を自身の目で体で検証し揺るがない信念を持つランプトン弁護士に当の本人であるリップシュタットやアウシュビッツ生存者を証言台に立たせないと言われはじめは本当にこの人に託してもいいのかリップシュタットの迷いが描かれるがアーヴィングの日記を読み解く為に裁判が始まる少し前から独学でドイツ語を学ぶ姿に頭が下がった。
そのお陰でアーヴィングの心のうちに隠してきた差別主義が明らかになり人間として最低な糞野郎という事を静かに熱く立証する姿は観ていて気持ち良かった。
ランプトン弁護士と弁護団の作戦勝ちに心踊った。

アーヴィングを演じたティモシー・スポールは本当に嫌らしい演技が素晴らしかった。
嫌な奴だったアーヴィングの役を引き受ける時に葛藤はなかったのか。
役者だったら案外悪い役の方が演じ甲斐があって楽しいのかも知れない。
それを含めて考えたとしても口の減らない差別主義者の役は嫌だったんじゃないかな。
だって観ていて本当に憎らしくてあー言えばこう言うアーヴィングが嫌いだった。
それにしても歴史を都合よく捻じ曲げてまでアウシュビッツを否定し認めないなんて意味が分からない。
認めないと言う事は今もヒトラー主義を支持していると言うことか。
本当に恐ろしい事だ。
きっとこう言う種類の人間はどんな事でも自分の意見だけしか認めないし他人の意見は受け入れられないし受け入れない可哀想な人間なんだろうな。
裁判に負けても私は間違っていないとテレビでの熱弁も虚しく見える。
本当に嫌悪するタイプの役をスポールも静かに熱演していた。
「ハリーポッター」のネズミ男だった頃よりかなり痩せてしまって別人のようですぐには分からなかった。


そもそもアーヴィングの主張に我慢ならなかったリップシュタットの気持ちも分かるけどアーヴィングという人物がどういう人間なのか彼の膨大な量の日記から導き出された恐るべき主義に絶句した。
結局はそう言う奴だっただけの事で今尚ヒトラーを支持する輩がいる事に驚きを隠せない。
アーヴィングは名の知れた歴史学者で地位のある人間の主張する危険な偏った意見に追従する人達が現れる事も恐ろしい。
実際著名人でアーヴィングを支持した人物も多数いたそうだ。
それは一体何故か。
その人達はこの裁判の結果をどう受け止めたのだろうか。
実際に起きたホロコーストを否定する人間が今の世の中に全体から見たら一握りかも知れないが今もいると言うことが脅威だ。
地位のある人間が間違った主張をしてもそれに流されず善悪を正しく判断できる人間でありたいと思った。
なかなかの社会派映画だった。
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