悪魔の毒々クチビル

ずっとお城で暮らしてるの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ずっとお城で暮らしてる(2018年製作の映画)
3.6
「テングダケには3つの毒が」

両親の殺害を疑われた姉とその妹、叔父が暮らす屋敷にイケメンいとこがやって来て一家が崩壊していくお話。


ホラー作家として名高いシャーリー・ジャクスン原作小説の映画化作品。
彼女の作品の映画化だと「たたり」なんかが有名でしょうか。
まぁ俺が観た理由は姉妹を演じているのが、アレクサンドラ・ダダリオとタイッサ・ファーミガと言う眼福コンビだったからです。
しかしこの二人ももう人妻とは、時が過ぎるのも早いもんで。
因みに両者とも夫との年齢差が10歳以上と、おじさんキラーな共通点があります。

今作はホラーでは無くスリラーであって、目を覆いたくなるような恐怖映像はありませんが、物語をどんよりとした陰鬱で純粋な狂気で彩る地味ながら印象的な作品でした。
その狂気の筆頭が妹のメリキャットを演じるタイッサ・ファーミガ。
劇中のナレーションも担当しており、今作の語り部も担っていますが姉のコンスタンスを護る為に庭の至るところに父親の遺品を埋め、本を釘で打ち付け彼女の言うところの防御の魔法を施し他者が姉と関わるのを異常に嫌っています。
常に猫背気味だし町の住人の殆どに嫌われているので、ずっと表情が暗いかひきつっていてこう言うタイッサは結構レアな気がします。
て言うかタイッサ、なんか若返ってない?18歳設定に違和感が微塵も無かったんですが。

姉は両親の一件で無罪放免になるも、その後は何年も屋敷から出られずにメリキャットに定期的に買い物を頼んで車椅子の叔父の面倒を見る日々。
こっちはこっちで奇妙なまでに笑顔を崩さず、妹の奇行にも一切注意はしなかったりとどこか様子が変。

そこにいとこのチャールズがやって来ますが、彼は彼で遺産目当てでコンスタンスを誘惑したりとメインのキャラは少数ながらろくな人間がいない。
チャールズ役は今ではウィンター・ソルジャーとしてお馴染みのセバスチャン・スタン。
代表作で知られているのはアメコミ映画ですが、普通に演技派な俳優だと思います。
チャールズの登場でメリキャットも段々彼を追い出そうと過激になっていく反面、いとこだけどイケメンなチャールズにどんどん惹かれていくコンスタンス。
原作だともっと彼のクズな一面が強調されているようで。
ちょっと面白いのが、金目当てとは言え観ているとまだチャールズと一緒になった方がマシなんじゃないかと思える所で。
高価な金時計もおまじないの為に埋めるメリキャットの行動を何も気にせず笑顔なコンスタンスという、どちらも極端な方向に吹っ切れていて端から見ると気味の悪い関係性、更に叔父に認知症の症状が出始めながらも空気的に触れない日常に困惑するチャールズ。そしてそこが唯一今作で共感出来た部分でもありました。

そこでメリキャットとチャールズの対立、そこに町の住人の溜まりに溜まったヘイトが加わりあの展開に繋がるのは予想通りではありましたが、いくつかスルー出来ない懸念も。
まずどうして住人にあそこまで嫌われているのか。
コンスタンスの元カレはまぁ理由があるっちゃあるし、姉妹の父親がろくな人間じゃなかった事にも言及はされていましたがあそこまで周囲に疎まれる上に、終盤あそこまで暴走する理由としては足りない気がしまして。

もっと気になったのが叔父の中盤辺りでのとある発言。
しれっとあんな事言うもんだからこっちも「え!?どういう事?」と困惑しましたし、そう言う事ならどう種明かししていくのか非常に気になりましたが、その時触れただけでその後はこの発言関係の描写は無し。
そこが気になり過ぎて無駄に考察しながら観ていましたが、見事に無駄でした。
単にボケていた状態での発言だったのか、ある種の憎しみの上での発言の分かりませんがどうやら原作でもここはかなり謎の部分だったらしいですね。

最初は「姉がダダリオで妹がタイッサとか最高やん…!」と思って観始めたら、まさかの絶対関わりたくないタイプの姉妹でした。

全体的に衝撃度は低めですが、メリキャットのラストシーンの台詞とそれに対するコンスタンスの返答はゾッとしました。
あれマジで言っていたんだろうし、何だったら普通に実行すると思う。
大袈裟さではなく神経質な狂気を見せるタイッサ・ファーミガを始め、各々クセのあるキャラを上手く演じていて決して好きなタイプの内容では無いながら中々良く出来ていたと思います。