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君の名前で僕を呼んでのHOHOのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.5
エリオになる。
そんな瞬間が、至る所に散りばめられた映画だった。サウンドトラックを聴けば、今も映画を観た時感じた胸の痛みが蘇ってくる。エリオの清らかさだけではない青い性欲や過ち、手に入れられなかった何かを、まざまざと思い出し、そっと目を閉じたくなる。
私の場合はエリオに共鳴し、エリオの目や耳を通し観ていたが、人によってオリヴァーやエリオの両親、マルシアなど、共鳴する登場人物は様々だと思う。
実は、ここまで映画の中の人物に「なった」と思うのは初めてのことだ。今まで数多好きな作品はあれど、それはどこか自分と異なる人生を覗き見る快楽性が強かったように思う。エリオとオリヴァーのような恋をしたことがあるわけでもなく、もちろん私は北イタリアに行ったこともない。でも行った気になってる、何でだろ。1シーン1シーンが、どこを切り取っても絵葉書になるような美しい情景は、自分の生きている現実とは遠く離れたものなのに、愛おしさを感じるほどだ。

この魅力は、エリオとオリヴァー双方の持つ「罪」及び「罪悪感」によるものかと私は考えている。
エリオの、少年の青さ。
オリヴァーの、青年の悟り。
エリオの両親やマルシアなど、2人の周辺にいる人物が善良で、目立った嫌な部分を見せないのもあり、この2つが際立っていると思う。
エリオは、青さゆえオリヴァーへの想いを止められず、その若さをぶつける。
オリヴァーは、今までの経験や社会的な立場を思い、エリオへの想いに従順になれない。
その罪が、一見美しすぎる2人の男性に、私たちが入り込む余地を与えているのではないだろうか。私たちもそれぞれの時期で葛藤を抱え、それを乗り越え次の段階に進んでいく。その葛藤の痛み、悩ましい罪悪感に、自然とシンクロしている自分がいたように感じた。

さて。とはいえ、無駄な説明を一切排除した作品であったために、まだまだ分からないことが多くある。購入した原作を読み終えたら、またもう一度映画館に観に行きたいと思う。異なる感じ方ができるか、楽しみだ。
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