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君の名前で僕を呼んでのhi1oakiのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
【リメイク版『サスペリア』への助走[1]】

良い青春映画で語られる話というものは、トラウマティックな事件ではなく、後の人生でふとした時に思い出すくらいのあくまでも若き日の瞬間。
少年が大人になり大人が少年になる“ひと夏の恋”という“ありがちな話”を特別なものにしているのは、キメの細かい人物描写。
例えば本を落としたフリをしてオリヴァーを起こすエリオの控えめな性格がマルシアとの関係を経て自信を付けていく様や、起こされても寝続けたり出されたアプリコットジュースを一気に飲み干すことでオリヴァーの横柄とも取れる積極性を表面的に示すシーン。そういった描写の積み重ね。
そしてさらに昨今の映画では珍しいほどに登場人物達がタバコを吸う。両親だけでなくエリオも吸う。そして母親が本を朗読する時にエリオは父親にもたれかかり、父親は息子を撫でる。そういう部分にこの家族の関係性や考え方が垣間見えるので、終盤の展開を観るものにスッと受け入れさせる。こんな家族って素敵だよなと素直に思わせてくれる。
美少年やイケメンを必要以上に綺麗に描き過ぎていないのもイイ。同性だろうと異性だろうと、所謂“愛を確かめ合う”シーンはわざと意地悪に撮ってる。

これだけの技術を持った監督が撮る『サスペリア』のリメイクははたしてどういう“怖い”映画になっているんだろうか。
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