さすらいの雑魚

A2 完全版のさすらいの雑魚のレビュー・感想・評価

A2 完全版(2015年製作の映画)
3.9
名古屋シネマテークのA A2 連続上映企画2日目。
A の3年後を撮った森達也のオウム真理教ドキュメンタリー。A で幹部逮捕で不在のなか窮地の教団を背負って奮闘する温厚で誠実な広報担当として見た人の共感をさらっていた荒木浩さんが本作でも撮られてるのですが、副官あるいは参謀として上祐史浩教団代表の傍らに控えて貫禄たっぷりだったりヨーガ行者然と修行してたりと、3年の苦労が人の格を上げたと言うか、あの七転八倒しつつ不器用に頑張っていた田舎出のお兄ちゃんはもう居ないのね、と少し寂しかったりする。ちなみにこの荒木氏は教団の麻原回帰派の領袖として上祐派排除に動くことに。人はいつまでも無垢な若者ては居られないって事かと少し寂しいボクである。Wikipedia情報だけどね(^_^;)
地方拠点の信者と監視排除を企てる住民との深刻な相互不審が時とともに本質的な対立はそのままに打ち解けあい 信仰さえ止めたらいつでも帰ってこい みたいな風で立ち退きのときに涙ぐむオバちゃんまで出てくるなんて、人の不思議と言うかなんと言うか。人は理解しあえなくても友達にはなれるのね、と少しホッとした。
オウムだけでなく反対運動をする右翼団体や住民、取材する者とされる者、麻原の娘と情のある交流をしつつ監視をする警官まで取材しカメラを回す森達也の取材力に脱帽なのです。みんな顔出しなんだぞ、よくカメラ回す許可もらえたなと驚きですよ。
変化するもの、変わらないものを活写し森達也の複眼的な視点が冴るドキュメンタリーの秀作と思いますが、やはり A の衝撃には一歩及ばないかとも思うのです。