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レザボア・ドッグスのGreenTのレビュー・感想・評価

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)
4.0
冒頭、黒いスーツを着た男性たちが、マドンナの『ライク・ア・ヴァージン』がなにについて歌っているのか、チップを払わない哲学とは?みたいなくだらない会話を延々としているのですが、この映画が出るまで、登場人物がプロットに関係ないことを話すってことはあり得なかったと聞きました。

確かに、私は最初この映画を観た時に「この映画どこに行くんだろう?」と思いましたもんね〜。でも今考えてみると、このシーンだけで各登場人物の性格がわかるようになっていて、後に起こる事件でのリアクションとかにも矛盾がない。

タイトルロールで黒いスーツの男たちがスローモーで歩いているところはやっぱりカッコ良くて、しかもポップソングをBGMに使っているところが確かに新しかった。この映画は、いわゆる「映画音楽」を全く使っていないってことも斬新だったらしいですが、そういう予定調和を一気にぶっ壊してあるからなんの話だかわからなくて、それでこんな説明のつかない緊張感が続くんでしょうね。

この映画観たことない人いないとは思うのですが、もしいたら、ネタバレを知らないで観た方が面白いと思いますので、この先の私の感想は飛ばして、Let’s clip!!







緊張感って言ったらやっぱいきなりティム・ロスですよね〜。腹を打たれて悶絶しているあれは本当に度肝抜かれます。あれ、名演技ですよね!あの、尊厳を剥ぎ取られた高い声で「I’m sorry〜〜〜!!!I’m gonna die・・・」って。しかもそのまま放置され続けるので、「いつ死ぬの?なんか起こるの?」ってずーっと気が気じゃない。

この時点で、まだ登場人物の名前もわからないし、なにを犯ったのかもわからないという。

あともう1つ、緊張感って言ったら、言うまでもなくMr. ブロンドですよね〜。今回観ても、あのシーンは指の間から観てしまいました。初見の時から思ってたんですけど、切るところを露骨に見せている訳ではないのに、あの怖さはなに?!あれも、“Stuck In The Middle With You” という軽快なポップソングをバックに行われるのが、ものすごい異様なんだけど、この歌のタイトルって「あ〜あ、君と宙ぶらりんなところで取り残されてしまったよ」みたいな意味なので、あの警官の心境を描写するような曲だったんですね!タイトルロールの”Little Green Bag”も、Greenはお金の代名詞なので、「これから強盗に行くよ〜!!」って歌だったのかな。最初はピンク・フロイドの「マネー」を使おうと思っていたって話ですからね。

Mr. ブロンドを演じるマイケル・マドセンも、めちゃくちゃハマり役ですよね〜。この人が実は、このシーンが残酷すぎて、演じるの躊躇したって話を聞いて「へえ〜!」と思いました。どう見ても頭おかしいとしか思えないのに!

ブシェミも、多分これか、『ファーゴ』で初めて観たんじゃないかなあと思うのですが、良くこんな人探してきたなあ〜って思った。タランティーノも、オーディションに現れたブシェミを見て「本物の犯罪者みたい!」って思った、って話を聞いて「そうだろうなあ」と納得した。あのチンピラ感、なかなか出そうと思って出せるもんじゃないですよね〜。

最初、Mr. ピンクの役はタランティーノが演じたかったって話を聞いて驚いた。この映画のオーディションや本読みにはそうそうたるメンバーが名を連ねていて、タランティーノが最初に理想としていたキャストとも違うみたいだし、制作資金を出すと言ってくれた人の中に、「俺の彼女がMr. ブロンドを演じるのが条件」って言ってきた人もいて、あまりの斬新なアイデアにタランティーノもちょっと考えてみたって言ってたくらいで、本当に、「これ以外ない」って配役なのに、全くどうなっていたかわからなかったっていうのが運命を感じるというか、映画って不確定要素が多くて、全てがバクチだなあ〜と思った。

Mr. ホワイトも、ハーヴェイ・カイテル以外の候補もいっぱいいたみたい。そもそも、この人が関わったことでプロダクションが進んだのに、彼はこの役を最初から演じたいってことではなかったんだ〜とそれも驚き。

裏話で驚いたのが、タランティーノが公開インタビューかなんかで、ファンの人に「どうしてMr. オレンジは、最後Mr. ホワイトに、自分がRat(密告者)だって告白したんですか?あと6秒待っていたら助かったのに」と質問したら、タランティーノが「そういう質問が出ること自体、この映画を分かっていない!日本では、『仁義』ってものがあって、Mr. オレンジは、Mr. ホワイトに借りがある。それを返さないわけには行かないんだ」って言ったって iMDb に書いてあったけど、私はあのシーンを観ながら思いっきり

「なんで今バラすんだよ〜〜〜〜!!!!」

と叫んでしまった。日本人でも、ヤクザ映画を観ない人は仁義が分からないのかな?それとも私がアメリカナイズされすぎ?それともそういうカルチャーが合わないからアメリカに引っ越したのだろうか?(笑)

Mr. ホワイトは、冒頭のブレックファストのシーンから一貫して、トシも上だし、犯罪経験も豊富、落ち着いていて、Mr. ブロンドと合わないな〜(笑)みたいな、昔ながらの犯罪者って感じはしていたのですが、個人的には、「なんでこんなMr. オレンジに肩入れするんだろ」って思ってた。名前や出生地を話したとか、そうやって心を通わせてしまったんだろうか?そういうことするべきじゃないって言うMr. ピンクの方がよっぽど正しいよ!って思った。国民性というより、世代の問題?

あと、クリス・ペンが懐かしいですよね〜。久々に観たのでジョナ・ヒルかと思った。リメイクは是非ジョナ・ヒルで。あのクリス・ペンが演じるナイスガイ・エディとお父さんのジョーだっけ?あの2人だけが黒いスーツ着ていないところがまたいいんだよね。あの、リアルな、ヤクザなお兄さんが着てそうなウィンドブレーカーみたいの(笑)

当時はやっぱり衝撃的に斬新だったのでタランティーノ、カッコいい!って思ったけど、つまるところこの人ヲタクだし、漫画的なところも多いので、基本的にあまり好きではないかなあと思った。『パルプ・フィクション』や『キルビル』のような大ヒット作でさえ、好きではないかなあと。ただ、登場人物のキャラ設定がすごい緻密だから趣味に合わなくても面白く観れるんだなあって今回は思った。だって、登場人物のほとんどが、本名さえわからないし、プライベート一切わからないのに、性格がクッキリ際立っているって、すごいなあって思う。
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