Kuuta

アンチャーテッドのKuutaのレビュー・感想・評価

アンチャーテッド(2022年製作の映画)
3.5
良い意味で普通。ファミレスみたいな映画。原作ゲームは4作ともプレー済みで、ファン目線強めの感想。

ゲーム自体が「プレーできる映画」をキャッチフレーズに、過去の名作のオマージュだらけで作られており、今作も既視感のある、懐かしい展開を辿る。

面白過ぎない会話に、つまらな過ぎないアクション。ハムナプトラの再放送を飽きるほど見てきた世代としては「こういう映画で育ったんだよなあ」としみじみ。ゲームの映画化は悲惨な結果になる事も多いだけに、普通に見られるレベルにまとまってて一安心、というのが総評。

▽上手い改変、手堅い演出
goneとlostの違いについての冒頭のやりとりは、作品テーマを簡潔に示していて素晴らしいと思った。今作のキャラクターは誰もが喪失感を抱え、まだ見ぬ世界に心を埋める何かがあると信じ、前へ進まずには居られないのだろう。

ゲームでは、後付け設定を使いつつ徐々にキャラの厚みを増してきた経緯がある。2時間の映画でどう表現するのだろうと心配していたが、ネイトとサリーを初対面の関係に変え、「失踪した兄に対する探究心」に引っ張られる形で、ネイトが能動的に宝探しに向かう展開にまとめている。

冒険を通してサリーのキャラも見えてくる構成のため、ゲーム未プレイの人にも飲み込みやすくなっている。ここは上手い改変だと思った。

(キャラは原作からだいぶ変わっているが、見た目からして別人だし、新解釈としてそこまで違和感はなかった。声優がゲームから差し替わったのも残念ではあるが、トムホとマークウォルバーグの印象に合わせるという意味では当然の改変だと思う)

演出も手堅い。落下と上昇、物の受け渡しで描く信頼と裏切り。「落ちるでも上昇するでもない調和」が一瞬現れて消える、というラストには目を見張った。

▽ノンストップアクション…?
ネイトが開けるトランクには原作ゲーム会社「ノーティドック」のステッカーが貼ってある。

ノーティは今シリーズも、クラッシュバンディクーも、ラストオブアスもそうだが、「一本道を進むor戻る行為」に物語性を込める演出を突き詰めてきたブランドだ。キャラクターに「道を進ませる」ゲーム、つまり元々映画っぽいゲームを作る会社である。

今作にも、ゲーム同様一度始まったら止まらないノンストップアクションを期待していたが、話も映像も割と「止まる」。ここが一番残念だった。

設定が多いから仕方ないのだが、どうしても説明セリフが多い印象だ。アントニオ・バンデランスの親子の一連のシーンも、あそこまで時間を割く必要はあっただろうか。

10年以上前からの企画で、最初はマークウォルバーグをネイト役にする予定だったらしい。その名残なのか、彼がサポート役のサリーというより、ネイトっぽい感じで前目に出てくる(が活躍しきらない)ところもバランスの悪さを感じた。

アクションでも、例えばトムホが照明にぶら下がる場面。ポリスストーリーを連想して心躍ったが、編集で繋いであっさり床まで降りてしまう。そういうとこが見たいんだよ!と。

アンチャーテッドの映画化と聞いて、事前に期待していたのは①道なき道(崖)を進むシーン②崩壊する巨大遺跡から脱出するシーン③異国情緒あふれる市街地でのパルクール、だったのだが、①と②は全く無かった。③に関してはクロエとのチェイスシーンはあったものの、カット割り過ぎだし、絵面も地味。消化不良だった。

ゲームだからこそ成立していたとんでもアクションを、実写の引きの構図でやってくれたら、それだけで大満足だったんだけどなぁ。

▽イースターエッグいろいろ
手を握って引っ張り上げたり、誰かの踏み台になったり。ゲーム内では、キャラクターの連帯を示すと共に、プレイヤーを待たせるロード時間を減らすため、画面を暗転させる代わりにこのアクションで時間を稼ぐ、という機能があった。

ロード不要の映画では当然入れる必要はないのだが、ゲームのオマージュとして、クライマックスなどの重要なシーンで登場している。

・映画の一言目のセリフ。ニッコリした。
・オープニング。アンチャーテッド3の見せ場+「何でこんなことに?」という場面設定を後で回収する2の構成の引用。
・本格味のない申し訳程度のステルス要素。
・本来のネイトの衣装にトムホの姿が近づき、いつものテーマ曲が流れる演出はベタだけど嬉しい。
・サムとの思い出の博物館。画面の暗さといい、4のプロローグの完全再現に興奮。
・「見捨てるか見捨てないか」というやりとりはゲームでも繰り返し語られるテーマ
・仕掛けだらけの時計塔のような空間は4。ゲーム同様、上に登っていって大崩壊する展開を期待したが、一瞬映っただけで残念。70点。
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