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デューン 砂の惑星PART2のKuutaのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.1
池袋に行くタイミングがなかなか無く、我慢できずに通常版を見てしまった。IMAXで見たら加筆します。

・巨大な物体がぐわああと動く快楽を浴び続け、ポールが初めてサンドワームに乗る場面で涙が流れてきた。光と影に二分された砂丘の上、稜線を走るポール。サンドワームが境界を突き破り、生まれた谷底にポールが落ちていく。「あ、これ砂の山ごとぶち抜くんだ」と気付いた瞬間、脳内で期待するイメージと目の前の映像が一致するという、贅沢な喜びでいっぱいになった。このシーンだけでもDUNEを映画化した意味はあったと思う。
(このシーンの神々しさに打ちのめされた直後、路線バスの如くみんなでサンドワームの背中に座っている落差に笑う)

・「ヴィルヌーヴは好きだけど前作はさすがに話進まな過ぎだろ」派だったのだが、今作を見て改めて、前作は話進まな過ぎだったなと思った。今回は起承転結があり、166分の長さは全く感じなかった

・原作と異なるチャニ(ゼンデイヤ)の役割がくっきりしてきた。覚醒するポールと袂を分つラスト。全体主義者のようになっていくポールを英雄視せず、相対化する。「ジハード万歳&白人酋長もの」とも言える原作に、現代的な視座を差し込む改変だ。「アラビアのロレンス」がロレンスの内面の分裂として表現したものを、今作は2人のキャラクターで描き分けている。ポールをどう位置付けるのか、前作の曖昧な描写の消化不良感が解消されていた。

(「プリズナーズ」のことを思い出す。あれも神に縋る主人公と、合理的に行動する刑事の話だった。また、今作の戦いがイスラエル紛争を想起させるのは、中東や聖書をベースとした原作からして当然ではあるが、ヴィルヌーヴ自身が「灼熱の魂」の時点で内戦に巻き込まれるキリスト教徒とイスラム教徒、母が物語る息子との因縁を描いており、ずっとDUNEを撮りたかった人なんだなと改めて認識した)

ポールは巨大な予言の一部となることを選ぶ。チャニはポールを救うために自身の涙を提供したが、予言には与しない。そんな彼女の生き方がどのように描かれるのか。Part3の正式発表はないが、続きが大変気になる終わり方だった。

・ミニサンドワームから命の水を取る場面の、職人技を見学している雰囲気がよかった。毒を盛る毒親ジェシカも流石に困惑気味だった

・前作同様、編集はのんびり。一枚絵をじっくり見せる。冒頭、ふわーっと浮き上がるハルコンネンの兵士のロングショットが心地良い(直後に残酷な形で落下させられる)。採掘部隊を奇襲するシーンだけは現代的なアクション映画のテンポに感じた。
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