Mikiyoshi1986

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

4.0
念願のクーリンチェ!
Film Foundationの尽力によって蘇ったデジタル4Kの美しさ!
エドワード・ヤン幻の傑作を劇場にて、やっと拝謁することができました。

時は1960年前後の夏。
長年続いた国共内戦に勝利し中国本土を掌握した中国共産党の裏で、台湾島に逃れた蒋介石は新たなる民主国家・中華民国(いわゆる台湾)を設立。
そこではまだ将来の展望すら望めない不安定な社会情勢の中、カメラはあらゆる光源に触れながら人々の営みを実直に照らし出してゆきます。

かつて占領下で大日本帝国に翻弄され、中国では中国共産党に翻弄され、そして今は台湾という安住の地を手にしてもなお中国国民党に翻弄されている大人たちの動揺を尻目に、
少年少女は勉学や恋愛、友情、喧嘩、音楽、嫉妬、博打などに明け暮れ、青春の真っ只中を体現するヒリヒリとした情感が画面全体を覆い尽くします。
無垢さと残酷さが表裏で共存する、彼らに用意された唯一の閉塞的世界。

鑑賞中は「リリィ・シュシュのすべて」だったり、「青い春」だったり、「恋恋風塵」だったり、「霧の中の風景」だったり、「さらば青春の光」だったり、はたまた西尾市女子高生ストーカー殺人事件だったりと、
もどかしい思春期のギザギザハートっぷりを反芻しながら小四たちと世界との距離感を終始追っていました。

"純真"であるが故、突発的に世の中の"不純"を討つに至った小四が切なすぎてツラい…。

カットの絶妙なタイミングに幾度となくオォ…!ってなったし、息を呑む構図、小明の透明感、小四の家族模様、暗闇から飛んでくるバスケットボール、保健室の扉にぼんやりと反射する二人の姿など、打ちのめされた瞬間は数知れず。
意外と睡魔に襲われることもなく、すんなりと四時間弱を乗り切ることができました。

また2,200円払って四時間座り続けるのはさすがに躊躇するけども、もし国内盤Blu-rayが出たら是非とも購入を検討したいです。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986