次郎

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版の次郎のレビュー・感想・評価

5.0
人生ベスト級の映画体験。60年代に台湾で実際に起きた少年殺人を基に作られたこの映画は観ることで自分の中にひとつの人生が、とある家族の苦悩が、時代の不確かさの痛みが注ぎ込まれていく。人生において大切なことが、この中には沢山詰まっているのだと確信できる喜び。

映像として刻み込まれた鮮明なる光の闇の風景。暗がりを照らす懐中電灯の明かりは力強くもあるし、心細くもある。それは「心の闇」なんて陳腐な言葉で少年犯罪を片付けさせようとしない卓越した技術と当時の時代背景に対する深い理解、そして少年少女の感情を浮かび上がらせようとする凛とした意思のあらわれ。

時に覗き見するかのように、時に不親切に視点を限定した映像。それは少明の心を、世界を変えたいと願う少四の思いを嗤うかのように不親切で、不確かだ。それでも胸に残る、奥行きのある映像の鮮明さ。人生の1日を費やすに値する3時間56分。暗闇のスクリーンで体験するに値する映像作品。

とはいえ休憩なしでのこの時間は流石に長かった。。見終えた後、心だけでなく腰と尻に不可逆な影響が残るんじゃってくらいにへろへろでした。
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