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ザ・シェフ 悪魔のレシピのTSのレビュー・感想・評価

ザ・シェフ 悪魔のレシピ(2016年製作の映画)
3.6
【世にも恐ろしいケバブ店】77点
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監督:ダン・プリングル
製作国:イギリス
ジャンル:ホラー
収録時間:120分
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2017年劇場鑑賞16本目。
「未体験ゾーンの映画たち2017」という企画がやっていまして、いわゆるB級映画祭です。で、今日は祝日だし3本立て続けに見てしまえ!ということで1本目。いやはや、タイトルやジャケからしてB級スプラッタ感満載でありましたが、見てみるとそれだけでなく差別問題も視野に入れたまずまずの作品でした。

若者が夜な夜なナイトクラブで遊び狂う街。その端で営業するケバブ店は若者の溜まり場と化していた。客同士が争い、店内がぐちゃぐちゃになったので警察を呼ぶも三時間後に到着。そんな治安の悪さに失望し、この社会に怒りを抱いていたサラールであるが、ついに彼を変えさせる事件が起こる。。

120分。。こういうジャンルの作品にしては長い方です。しかし、それも納得でして、こういうジャンルの他作と比べると今作はストーリーに深みがあります。
やはり海外のクラブって酷いもんですね。何がというとそのクラブの周辺。ミナミのクラブ付近も大概ですが、今作のクラブの周辺は最早スラム街。夜のこの街では酔った人間がゲロを吐いては小便をしたり、恥部を見せたりする始末。また、サラールの店にも常に酔ってる客しかこないという有様。そういう近辺へのストレスが溜まりに溜まって、決定的な事件により彼は変えさせられます。

今作はスプラッタ映画でして、モンタージュとかそんなのはあまりなく手とかをぶった切る映像を直接描きます。なので、ある程度のグロ耐性はあった方が良いと思います。まあ要するに不遜な客を殺してケバブにしてしまうというトンデモ設定です。しかしながらサラールに起こった悲劇やどうしようもない客を鑑みると、サラールにやや感情移入してしまいます。そして恐ろしいことに、ミンチにしている描写も見続けたら慣れてくるのです。それを、態度が悪い客に食べさせるというオカルトぶり。エグいことをしてるのに正直見ていて面白いです(笑)

さあそうやってなんと7年も営業を続けていたサラールですが、教会にもクラブを建設するという話が入りついにクラブの経営者と全面的に対立します。このサラールを演じるジアド・アバザはお初目にでしたが、経営者のブラウンと睨み合うシーンなどでは中々の覇気を持ち合わせていましたよ。中々の演技でした。
このブラウンも中々憎いやつでして、クルド人であるサラールを罵倒します。それだけでなく酔った客が彼を罵倒するシーンもありましたので、差別問題も視野に入れている作品だと思いました。クラブを出入りする人たちはほとんどが白人でして、好き勝手にしている。そしてサラールの許可なしに近隣に防犯カメラなども平気でつけていきます。実に住みづらい環境。おまけにあの事件ですからサラールが狂うのも理解できます。

普通スプラッタ映画となれば、全く感情移入が出来ない犯罪者を扱う場合が多いですが、本作においてはそんなことはない。しっかりと前半で彼がそういう行為をしてしまう理由が描かれるため、彼がやっていることがあたかも正義のように思えてしまうのです。その点が、こういう作品の中でも珍しいと感じました。

逆に言うと、彼は最低限の理性を備えているので、狂ったサイコパス映画を期待して見ると物足りないかもしれません。しかし抑えた分、ストーリーに深みがかかっていたと思えました。

さて、今作を見た人はケバブをすぐさま食べたいと思うのでしょうか。。
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