グラビティボルト

羊の木のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
3.6
腑抜け〜、パーマネント野ばら、美しい星では狂った人
桐島、紙の月では繊細な人
を扱った吉田大八がいよいよ
「鈍感な人」を扱った作品だと思う。
演技や仕草の諸々から錦戸亮演じる月末は優しいのではなくひたすら鈍感な男である事が提示されてる。(ヒロインと付き合えない理由、クライマックス着いていく理由)
今までは近藤龍人と組んでいた監督が今回は芦澤明子&永田英則の黒沢組スタッフを招き入れているからか
特に松田龍平周りの演出、撮り方が効果的。
冒頭月末と松田演じる宮腰が会話する場面、月末は窓に像が反射するが宮腰は反射しない位置に立つ。中盤以降ではいよいよ全身を闇で覆い実像が危うくなる。
その他の美点として車を使ったバイオレンスも挙げておきたい。フレームイン/アウトの間隔が上手だった。
人物の仕草に対する細かい演出や、だらだら続けているのであろうバンドの場面など魅力たっぷりなんだけれども
「歩く祭り」という魅力的な場面を作っているのに動線の演出にあまり凝りを感じなかったり雨の画にも魅力が感じられなかったのは残念。後、紙の月の時にも感じたんだが「落下」はもっとシュールに撮って欲しかったよ。
銅像のクラッシュに「勝手にしやがれ!!成金計画」を感じたからこそ。
それに、崖という飛躍の予感を提示してからクライマックスまでの間がちと長い。
見応えは相変わらず素晴らしいからより凄い作品を期待します。