なんだか不思議な作品だった。麻薬に囲まれたストリートの話なんだが、その中で負った大きな傷と、数少ない癒やし。それを丁寧に、繊細に描いている。
幼少、若者、大人の軸で展開するが、どれも共通して主人公の生い立ちや環境からくる苦しみが大きいのだが、その中である種のピュアさを失わない彼の回顧録、中でもMoonlightでの経験が彼を救ったのだと思う。
わりと薬がらみの作品は賑やかになるか、鬱展開かに分かれるが、この作品は静かに展開していくなかなか珍しい作品。感情表現がうまくできない彼の代わりに、音楽やシーンの美しさで多くを語っている。特に幼少期の彼の不安定さをカメラワークや演出でうまく表現されているのに、こちらも彼と同じ心情にさせてくれる。
その後の彼が幸せになれるか、はわからないが、そうであってほしい、と思わせる。