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ムーンライトのTSのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.8
【マイアミに生きる不幸な少年】80点
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監督:バリー・ジェンキンス
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ
収録時間:111分
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2017年劇場鑑賞33本目。
第89回(2017)アカデミー賞作品賞受賞。
作品賞の本命だった『ララランド』を破って作品賞に輝いた作品。その前例のないアクシデントのおかげもあり、4月下旬公開予定だったものを一ヶ月も早く公開するという異例の事態。ということで嫌でも期待値は上がってしまいます。さて、そんな事情ありの本作でしたが、確かにそれなりによかったものの『ララランド』には到底かなわないかなと思いました。系統が全く違うので比較するのも可笑しな話かもしれませんが、個人的には『ララランド』に作品賞をとってほしかったですね。

マイアミの貧困街。地域の麻薬組織のボスであるフアンは、彷徨う一人の少年を保護する。中々口をきかないその少年はシャロンという名前であった。住所を聞き出し彼を家に帰そうとするのだが。。

本作は三章立てです。主人公のシャロンの成長に伴い章分けがされています。助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは麻薬組織のボスであるフアンを演じます。麻薬組織のボスと言いますが内面は心優しい人だと思えます。泳ぐこともできないシャロンに様々なことを教えていきます。

さて、今作の主人公であるシャロンは不幸をどれだけ背負ってるのか、というくらい不幸です。親はヤクをしていて、シャロンは日々虐待をされます。また、学校でもゲイということでいじめられてしまう。まともに金を稼ぐためにはヤクを売り捌かないといけないという異常ぶり。この凄惨な日常を打ち破ってくれたのがフアンであり、またそういう関係をもったクラスメイトのケヴィンであります。彼らのお陰でシャロンにも生きる勇気、希望が芽生えます。それにしてもこのシャロンという少年はかなり肝が据わっています。ある人物を椅子でブン殴る時はスカッとしましたし、純粋に勇気があるなと思いました。

淡々とシャロンの成長を追っていく作品でして、衝撃の展開があるわけではないのでやや地味。いや、地味だけならまだしも内容も相当重いです。それらを覚悟して見ないといけない作品であり、作品賞だから涙腺崩壊のドラマか?!と思ってみると肩透かしをくらうかもしれません。BGMも良く、それに合った落ち着いた描写。総じてなかなかいいな。と思う作品ではありますが、作品賞争いとなると、やはり美麗で楽しくてそして感動できた『ララランド』には及ばないと思いました。

LGBTの描写が多いと思いきやそれ程多くはありませんでした。しかし、これが原因で学校においていじめられているわけですから大問題です。いや、それ以前に本作で描かれているマイアミの地域がやはり異常です。母親をダメにした麻薬を売らなければ生き残れない。そしてその自分が売った麻薬がまた誰かの身を滅ぼすという悪循環。今作はマイアミが舞台ですが、世界中に似たような、いやこれ以上の無法地域は結構あると思います。今作はLGBTの問題だけでなく、そのあたりのことについて考えさせられる作品となるでしょう。そう考えれば、やはり今作が作品賞としてふさわしかったのかもしれませんね。。
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