このレビューはネタバレを含みます
女神は女の顔をしていない。
作中スローンは徹底したロビイストであり人格破綻者として描かれる。こういった人間描写は最後に「実は悲壮な過去が」というのがお約束で、実際物語の結には必要不可欠。ソシオパスが正義の側に立つなんていうのは背景描写がなければ普通納得がいかないから。
しかしスローンにはそれがなくとも完成された非人間的存在のキャラクター性が付随している。『プラダを着た悪魔』のミランダなどをイメージするとわかりやすいが、彼女達は人間的な感性が乏しければ乏しいほどに素晴らしく見えるのだ。
物語の最後は普通予想がしやすいもの。しかしその展開に至るまでには普通なら越えられない"一線"をスローンは越えている。どんな歴代の知能犯も人間的なら絶対やらないだろうという一線であるだけに、いやいやまさかそんなと皆首を横に降る。
物語に不要な描写がないのではなく、意図的に最後にダムを崩壊させるような伏線回収が個人的には大好き。意見陳述の席にスローンが着いた瞬間にゾワゾワと気持ちよくなりました。