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この手紙を読むときはのnagashingのレビュー・感想・評価

この手紙を読むときは(1953年製作の映画)
4.0
きれいな円環構造。鐘楼をバックに白い鳥が横切る冒頭のショットに陶然とする。修道院の両側の窓から見える景色(片や表通りの喧騒、片や修道女が勤しむ中庭)、フィリップ・ルメールが働く自動車工場とジュリエット・グリコが乗る馬車など、近代以後と以前の対比がその後の対決を暗示。現代的な過剰流動性に適応したヤリチンVS保守的な慣習と倫理のなかに彼を封じ込めようとする元修道女の攻防。白くビビッドに泡だつ波頭と真っ黒につぶれた男女のシルエットのコントラスト、光と声が唐突に遮断されるトンネル突入がすさまじくかっこいい。愛嬌はあるが品性のかけらも感じられないフィリップ・ルメールの顔が妙味。煙草の火で裸体を隠す風船を破裂させるのにはしびれた。
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