JunIwaoka

ニーゼと光のアトリエのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
4.0
2015.10.25 @ 28th TIFF

映画祭のコンペティション部門選出作品にしては驚くほどシンプルなストーリー。40年代のリオデジャネイロにある精神病院で、当時の常識に捉われずに患者と向かい合うことをした医師ニーゼという女性を物語で、なにより重要なことはこの女性が実在したということ。時代や環境が変われば常識なんてものは変わるけれど、どんな時代に生きても一人の人間であるという真理は変わらない。(去年のとある映画でもそんなこと言ってたっけ)つまりは人を思いやり接することの尊さなんだよね。
当時は感情の起伏を起こす異常となる機能を不能にすることが治療とされていて、患者は治療の成果を研究する単なる対象物だった。そこで彼女が立ち向かったのは同僚であり、病院であって厚い扉を叩く後ろ姿や扉を解き放つときの強い眼差しが心に残る。過度なストレスや受け入れ難い現実によって自制出来なくなった感情は、彼女が与えた束縛のない空間のなかで無意識のアートとして開花する。
僕は自分が信じることに疑いもたず盲目的にいることは危ういことだと常々思っているんだけど、ニーゼのぶれることのない強い意思に深い感銘を受けた。エンドロール前に映るご本人によるインタビューで、時折剽軽に答えながら「人との向き合い方は1万通り以上ある」ということは、現代においても希望を見出すことができる言葉だった。
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