1940年代、精神病患者の人としての尊厳を無視した、暴力的な治療が当たり前とされた時代に、筆と絵の
具を持たせ自由に表現する画期的な改革に挑んだ、女性精神科医を描いたブラジルの作品。
冒頭からの病院内が刑務所にしか見えなかった。
患者はまるで人間ではないように扱われ、不衛生な環境に置かれている。
そんな中、女医ニーゼが荒れ果てた病棟を清潔なアトリエに蘇らせ、一人一人と向き合い、自由に表現させる。
暴れれば暴力で封じ込めるだけだった、それまでの治療とも呼べない行為とは正反対で、患者、ではなくクライアント達も落ち着きを見せていく。
前半の目を覆いたくなるような、陰湿で臭ってきそうな場面から一転、後半は色彩豊かな芸術作品と共に、光に包まれたような温かい描写と音楽がよかった。
事実に基づいた物語で、鑑賞中これはドキュメンタリー映画だったかと何度も見紛った。特にクライアント達は演技に見えず、自然な姿を追うようなカメラワークも計算されたものなのか。
ブレないニーゼ先生の姿に心打たれるが、支える夫のなんと素晴らしいことか。
愛らしい子猫たち。あの家庭あってのニーゼ先生なのだろう。
最後の上品なご本人登場でその思いを強くした。