ユミコ

自由学校のユミコのレビュー・感想・評価

自由学校(1951年製作の映画)
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主人公である夫の五百助(いおすけ。佐分利信さま)が突然、自由を求めて妻の駒子(高峰三枝子さま)にも無断で仕事を辞める。ただでさえいちいち口煩い妻は当然、五百助をガーガー責め立てるが、五百助の決心は固く、家出してしまう。行くあても計画もなかった五百助だったが、浮浪者(東野英治郎さま)に出会い、橋の下に住む浮浪者たちに加わって暮らし始める。夫が家出したから妻も必然的に夫からは自由になる(別に望んではいなかったけれど)。その後2人はそれぞれが何人かの異性に出会う。お互いそれぞれのお相手とこのまま恋愛に発展しちゃうの……? ってハラハラもの。

五百助の家出中に駒子に言い寄る男たちの中の1人で、キャンディ・ボーイ(当時この映画から「キャンディ・ボーイ」が流行語に)を佐田啓二さまが演じるが、驚きの演技だった…! こんな啓さま初めて! 声質まで違って聞こえ、画質が暗かったのもあって最初は啓さまとわからなかったくらい…。な、なんか、お化粧もしてない??笑。更にその中の1人である男を演じた笠智衆さまもこれまたびっくりな役…! 荒荒しく喧嘩っ早い男だったのだもの…。そして、啓さまの許嫁なのに五百助に恋する女を演じた淡島千景さまは、やはりココでもフラレ役だったけれど、向日葵のような見た目の千景さまのじゃじゃ馬娘っぷりは清々しいくらいだったな…♡

画質がかなり暗いので暗闇を観ているようではあったけれど、こんな古い時代なのにストーリーそのものや女性の方がウワテなところが驚くほど現代風に感じる。当時の世相を風刺した作品とも言え、敗戦後の東京に横行した賭博やストリップ、キャバレー、連れ込み宿といった描写… とりわけ連れ込み宿が語られる際、温泉マーク♨︎が大写しされたカットがミョ〜に印象に残る。作中の浮浪者のコミューンの近所に住む謎の男は、元海軍大尉だったが戦死した事になっていて、法律に支配されることのない人間だから、自分の正体は「亡霊」と語っていたが、当時は亡霊が多く存在していたのだろうな…と思わせられる。
作者の方は男性なのに、よくぞあそこまで女性のセリフに「男なんて滑稽… 馬鹿でマヌケでおっちょこちょいで空威張りで見栄坊でケチで好き者で気が小さい… 」などと言わせたなぁ… 偉い偉い。
それと、オチがこれまた現代的で驚き。これって、ホ、ホントにあの時代のお話?!ってなった。
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