部族差別や研究対象になるサーミ人。その血を受け継ぐ一人の少女、エレ・マリャ。自分の人生と自由を取り戻すため、家族と故郷を捨てる決断をする。
北欧の風景美や福祉国家とは裏腹に、人種差別が行われていたことを私は全く知らなかったので驚きましたが、少数民族に対する差別の一端を見せてくれる映画でした。サーミを知らない人には知る良い機会となる映画だと思います。
監督は親と祖父母世代がサーミ人であり、主演を演じたレーネ=セシリア・スパルロクさんは現実でもサーミ人!今も家族と共にトナカイ狩猟をしながら生活しているそうです。監督はいつかサーミについての映画を作りたいと思い、この映画を作るにあたってサーミの子供を集めて傷ついた差別発言を聞き出したそうです。その言葉たちが実際に映画で使用されているので、サーミ人にぶつけられる言葉一つ一つが重く、いろんな背景を考えさせられました。
スパルロクさんは今回初めての演技だったそうで(?)びっくりしました。百面相のようでした。ある表情から違う表情へグラデーションのように変わる表情変化が素晴らしかったです。
愛する家族、偏見のない目、自由。全ては手に入れられない当時の残酷さに心が痛みました。特に終盤の彼女の母の行動は…言葉になりません。
エレ・マリャと共に過ごすうちに、観客もマイノリティーの気持ちを悲しくも発見・共有できる映画だと思います。