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Dominion: Prequel to the Exorcist(原題)の消費者のレビュー・感想・評価

3.8
・ジャンル
オカルトホラー/サスペンス/ドラマ

・あらすじ
オランダでのナチスドイツによる苦渋の決断をきっかけに信仰を失ってしまった神父メリン
現在、彼は考古学者となりイギリス領東アフリカの小さな村で発掘調査に従事していた
調査の対象はキリスト教伝来より遥か前に建築された謎の教会
そこにはいくつか不審な点が見受けられた
新品同様の建築、何かを封じる様な彫像、地下に隠されていた異教の寺院…
そして村の族長から突如として発掘中止を要求される
それは教会には悪霊が眠っていると信じての事だった
やがて頻発し始める不審死、呪われているとされ排斥される少年チェチェに現れる異変…
更に兵士の何者かによる殺害を巡り軍と村人達は睨み合いの状況となるがそれは悲劇の序章に過ぎなかった…

・感想
悪魔パズズとの戦いを描いた元祖悪魔祓いホラー「エクソシスト」1作目の前日譚
元来、今作はシリーズ4作目となる予定だったが制作会社が出来に納得しなかった事から監督が降板し幻の作品となっていた
題材は正式な4作目と同じ物となっているがストーリーや構成は大幅に異なる

正式な4作目は避けられなかった悲劇から信仰に迷いを抱く神父メリンが悪魔との戦いを通じて信仰を取り戻すまでを描いていたが同時進行で様々な要素がごちゃついていた印象だった
今作も大元の設定はそちらと共有してはいるが個人的にはこちらの方が大分観やすいという感想
メリンの心理や彼の罪を追体験するが如く人間の醜悪を目の当たりにする神父フランシスの存在、パズズに取り憑かれたチェチェの境遇、白人と部族の間で深まる溝
そういった重要な要素が互いに絡み合っていて上手く整理されている

正式な4作目の方にしか描けていなかった部分もありはするがそれを踏まえても単純に映画としての完成度では今作の方が優っていると個人的には感じた
偏見、不信感、罪
そういった普遍的な物が捉えやすく描かれているおかげでキリスト教に限らず特定の信仰を持たない人間でもそれを信念や正義感と置き換えて解釈出来るのが特に良い

呪われた少年チェチェに関しても部族とは思えないライトスキンな容姿や結局部族側に悪魔を配置してしまうのか、と当初は違和感を抱いていた
しかし観進めていくと彼が排斥されているが故の孤独や純真さに漬け込まれて憑依されたのではないかと受け止められる

作中で最も良かったのがメリンとパズズに呑まれたチェチェの対話
キリスト教上の悪魔らしい相手の弱みを突き惑わせる論法と幻覚がメリンの罪悪感の本質を的確に表現していて、且つそれに打ち勝つのが悪魔とだけでなく自己との戦いでもあると強く伝わってくる
更に言えば自己との戦いは人生その物でもありメリン以外からもそれは感じられる

1作目の様なショック演出や恐怖性を求めてしまうと拍子抜けしてしまうであろう世界観なのは正式な4作目と同じ
それでも今作ならではのメッセージ性というのが明確にあり、構成がシンプルなのも手伝って良作の部類には入ると思う

次作はいよいよ昨年公開の最新作
「オーメン」の最新作も良かったのでこちらも期待して良さそうかなと思っているのでこちらも楽しみ
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