重厚で鈍重。
史上最も重厚な雰囲気を持つバットマン映画です。
しかし、重厚と鈍重は紙一重。
重厚感が雰囲気だけのもので、内容が伴いきれない場合、鈍重に感じられがちです。
僕の目には鈍重に映りました。冗長とまではいきませんが。
内容よりも雰囲気が重厚、というのは撮影と編集がもたらした部分が大きいです。
画面は終始暗く、明るい画面は皆無かと思います。特に序盤の単色ではない、深みのある黒・闇の表現は見事。
が、本当に明るい画面か無いのでメリハリには欠けます。これが息苦しさと鈍重感の要因に。
編集はキレが悪い感じがします。じっくり丹念に描きたいがゆえに、スロームービー的なテンポです。
横転したペンギンの車にバットマンが歩み寄る場面は必要以上に長かったなと。
あと、場面ごとに長く回すか細かく切るかのメリハリは乏しく、一定のテンポだった印象。
思えば『ダークナイト 』はリアルを追求しつつも、バットポッドの場面など、マンガちっくなカッコ良さを設けてバランスを取ってました。
本作はそういう馬鹿馬鹿しくも突き抜けた要素が希薄なので、リアルなのは良いのだけど、やはり全体として見ると平坦な印象なのです。
また本作はヒーローや自警団と言うよりも探偵や捜査官としての側面を強調しているのは興味深い切り口。
でも、終盤で急に「あ、そう言えばヒーローだったわ」と思い出したかのように人命救助の場面が入るのは、さすがに取ってつけた感で笑いました。
あと、予想外の要素が少なかったのも残念。隠し球が無しか。
目指した方向性は良かったものの、期待を上回る内容ではなかった、今年の最重要作品。