ぎー

THE BATMAN-ザ・バットマンーのぎーのレビュー・感想・評価

3.5
【2022年ヒット作特集1作品目】
人生で一番好きな映画シリーズの間違いなく有力な一つがクリストファー・ノーランのバットマン三部作。
だから結果的にバットマンの世界観が大好き。
この映画もすごい良かった。
ただ難しいのが、クリストファー・ノーラン以降のバットマン映画は、常にノーラン三部作の亡霊と戦わなきゃいけないってこと。
この映画も間違いなくそうだった。
全く力を抜くことなく全力でバットマンの世界観を演出し切って、どんだけ制作費かけるのってくらいの映像、演出、音響、迫力をやり切った素晴らしい映画になってる。
なのにどうしても俺らは勝手にノーラン三部作と比較しちゃう。
そして『ダークナイト』をはじめとしたエンタメ映画の三部作に勝つことはほぼほぼ不可能。
結果、すごい良かったけどノーラン三部作の方が、好きっていう感想になっちゃう。
この映画もまさにそんな映画だった。
バットマンの世界観を使いつつ、評価を求めるのであれば、もはや『ジョーカー』のように全然別コンセプトで挑んだ方が良いかもしれない。
この映画もノーラン三部作とはだいぶ違った。
ノーラン三部作がアクションや派手なマシン、大規模な戦いにフォーカスしてたのに対して、びっくりするくらいサスペンス要素が中心。
圧倒的なバットマンのフィジカルをベースにしながら、名探偵ホームズばりの推理、事実の解明を行なっていくという展開だった。
このやや垢抜けない感じは賛否両論あるかもしれないけど、ノーラン三部作と違うアプローチを取ったことは個人的には良かったと思う。
バットマンがビルからの降下が下手すぎたり、ちょっとすごい車くらいのクオリティのバットマンモービルが出てきた時はビックリはしたけど、リアリティ路線にいったということだろう。
正直どんなブルース・ウェインを見せてくれるのか期待してたロバート・パティンソンの演技のインパクトが薄かった一方で、本作のヴィランのリドラーを演じたポール・ダノは圧倒的気持ち悪さ。
『プリズナーズ』で既に真骨頂を見せていたけど、今世界でこういう猟奇的な役を演じさせて彼に敵う人はいない気がする。
非常に描写も丁寧で、色々な展開があるから見ていて楽しいんだけど、全体的にとにかくダークだから、3時間の上映時間は流石に長かったかもしれない。

※以下、映画の内容について
まず、バットマンは俺らの知ってる、方法は違法だけど正義心に燃えるダークヒーロー、じゃなくって、方法も違法で復讐心に燃える、ただ敵が悪者ってだけの男。
なんなら事件にも正義心から能動的に取り組んでいくっていうよりは、今回もリドラーに指名されて巻き込まれていってる感じすらある。
個人的にはこの設定はアリだったと思う。
だからこそ、今回の事件を経験して、終盤人間として成長して灯りを灯して人々を導くシーンが感動的に映ったんだと思う。
一方でキャットウーマンの設定は個人的にはイマイチだったかもしれない。
こっちはセクシーで盗みに長けた、王道の設定。
から、斬新さもなくって、アン・ハサウェイの劣化版みたいになっちゃった。
リドラーは色んな方法で殺人を犯してくれてスリリングではあったんだけど、日本人の俺らにはなぞなぞが難解過ぎたのと、とうとう最後まで犯罪の動機が分からなかった。
俺が3時間の長尺の中で見落としてただけかもしれないけど。
そしてゴードン。
どのバットマン映画でも圧倒的安定感、安心感を示してくれるけど、今回もそう。
彼とアルフレッドがいるからこそ、バットマン世界観は成り立ってると思う。

映画のスタート良い感じだった。
市長が普通にテレビを見ていて、突然部屋の中にリドラーがいる感じ、刺激的だったし、ピリッとした。

警察や検事、行政が汚れてるってのがバットマン世界観の共通ベースメントなんだよな。
だから、自警団的なバットマンが求められる。
っていう算段よな。

まさか普通のバイクで女の尾行をブルースがするなんて。
この辺りもノーラン三部作とは全然違うよな。
ノーランだったら、GPSとか盗聴とか駆使してやりそうなところだもんな。

ペンギンってのが何のことかと思ったら、ファルコーネだもんな。
すごいワガママだけど、ここは驚きが欲しかったところ。

市長の追悼式での検事への脅迫は迫力あった。
俺らも映画とか見過ぎてて、こういう犯行にどうしても斬新さ求めちゃうんだよな。
その点この場面はかなり斬新で迫力あった。

振り返ると、そりゃあ検事がファルコーネの名前をゲロル訳ないわな。
ゲロったところで、ファルコーネに殺されるだけだから。

ドロップの工場、追尾したらあっさり見つかったな。
これは敵が脇が甘いっていうか、それだけファルコーネ一味が警察とか周囲の目を気にしないくらいやりたい放題やってたってことなんだろうな。

ペンギンとのカーチェイスは大迫力だったな。
この一連のシーンだけでいくらお金使ったんだろうな。

ウェイン狙った爆弾テロはなんだったんだろう。
リドラーはウェイン殺す気あったのかな。
無かったにしてはアルフレッド重体になっちゃってるし、この爆弾テロだけは意図が分からなかった。

お父さんのトーマス・ウェインはどうしてファルコーネを頼った。
完璧な人間なのに。
ここだけはアルフレッドの言う通り、動揺して判断を誤ったと言わざるを得ないな。

そしてファルコーネがウェインの両親を殺した黒幕だったのか。
これはノーラン三部作でも描かれなかったことで、バットマン世界観では大きな真実だな。

キャットウーマンの友達の娼婦に、どうして市長はネズミが誰なのか言っちゃったんだろう。
酔ってたかもしれないし、気分良くなってたかもしれないけど、絶対に命を賭けて言わない方が良いことってある。

ファルコーネがバットマンによって捕まって、照明の当たるところに出されたところで射殺される。
ここまでリドラーの言う通りってのは、確かにすごい。

あっ、解説サイト見てやっとリドラーの動機が分かった。
同じ孤児として、正義のヒーローとして、バットマンに捻じ曲がって憧れて、バットマンを中傷しつつ、バットマンと正義を果たすってことだったんだな。
滅茶苦茶手間かかったな。

最後のバトル、バットマン危なかったな。
ただのリドラー支持者の市民が敵だから、余裕でぶっ倒して欲しいところだったけど、未完成のバットマンらしさが出たってことなんだろうな。

やっぱり復讐の塊だったバットマンが市民を守るマインド、姿勢になる終わり方は素敵だったな。
ぎー

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