継

サラエヴォの銃声の継のレビュー・感想・評価

サラエヴォの銃声(2016年製作の映画)
3.9
第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件。
現ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォの高級ホテルでは, それから100年を経た記念式典が催されようとしていた。

屋上ではジャーナリストが事件とその後の歴史についてインタビュー取材を行い,
式典に招かれたVIPは部屋に籠って演説の練習に余念がなく,
従業員達はこれに合わせてストライキを画策し,
独裁者風な支配人は地下組織を使ってその弾圧に動く。。。

ー ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のダニス・タノヴィッチ監督による群像劇。

【オーストリア皇太子夫妻を暗殺したプリンツィプは英雄か?テロリストか?
そもそも皇太子は犠牲者なのか?或いは占領者なのか…?】

いまだにぶつかり合うこの論争と, この経験が旧ユーゴ内戦に微塵も生かされなかったという嘆き, 怒り。
ムスリムの歴史学者と, 同じ↑プリンツィプの名を持つセルビア人という 対立する2人の生々しい言い分を「縦軸」として観せるストーリー。

2人に討論させるのでなく, インタビュアーを介して最初に歴史学者, 次にプリンツィプの順で話を聞くんだけれど, 学者の話を苦々しく聞いていたプリンツィプは最初から喧嘩腰で, 中立であろうとしてたインタビュアー(女性)が冷静さを失ってアツくなり, 激しい論戦になってしまう所が見処の1つでしょうか。
白熱する様は「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」と形容される多民族国家・旧ユーゴの一端を見るようでもあり, 相容れぬ双方の立場を鮮明にしただけの末路はある意味で皮肉な, 虚しいものでした。

階下に滞在するVIPは皇太子に見立てた?と思える役回りだけれど, 練習する演説内容は上述インタビューと対を為すように空々しくww, 胸に響かないもの。
ただ, 「…あの時, 欧州はサラエヴォで死んだ。アウシュヴィッツでもだ。どうして我々が生きていられよう...」と, 内容が何故か悲観的になり苦悩する姿は現在のヨーロッパ, もしくは作り手の思いを表すようでもあり...

その名も「ホテル・ヨーロッパ」で繰り広げられる顛末。
“ボシュニャク”なんて聞き慣れないワードが飛び交ったり, バルカン半島の歴史が頭に入ってないと置いていかれる場面もしばしば(^o^;)。
サスペンス仕立てではあるけれど, この監督は『ノー・マンズ・ランド』や『鉄くず拾いの物語』でも祖国をテーマに撮った社会派。
独裁的な労使関係は往時の独裁国家を模すようでもあり, 監視と暴力を行使する地下組織は秘密警察そのもの, 銃声にパニックとなる館内は戦場のようで, その中で再会する母娘と対照的に, もぬけの殻となったホテルの監視カメラにただ一人呆然と映る支配人の姿が印象的でした。
継