IPPO

わたしたちのIPPOのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
3.9
『はちどり』よりこっちの方が良かったなぁ…シンプルがゆえにエンタメとして落とし込むのが難しいこの内容、94分にしっかり詰まってる。

内気がゆえに友達が少ないソン。
夏休み初日に転校生としてやって来たジア。
夏休みの間に深まった2人の絆。しかし新学期になるとその関係はねじれてしまう。

子供の世界は残酷だとレビューする人が多いが、この作品の全ては大人の世界、すなわち世の中の縮図だと思える。強くある事でしか前に進めない厳しい人生を小学4年生の日常から切り取る。

子どもも大人も、誰かを知ってゆく時の光のような喜びと、もっと自分を知ってほしいと願うわがままさを持っている。
けれど、自分より下のレベルの人とは関わりたく無いとも思ってるし、誰かを攻撃する事がその集団の秩序を保つこと、そして自分のバランスを保つこともある。

残酷だけど、社会ってそうだよね。学校も会社も町内会やらママ友付き合いでさえも。

ソンは偉いなと思った。もっと泣いたり怒ったりしたって良いのに、お姉ちゃんとしても自分を抑えながら家庭内に居る。お金に余裕は無いけど何だかんだとソンには家族がある。
ジアは何だかんだ言って両親が側に居ない事で素直さを失っていく。


『パラサイト』の砲丸投げ母ちゃんが主人公ソンの母親役だった。緩やかに温かい、食堂を切り盛りする大らかな母ちゃん。『はちどり』はぎすぎすした家庭内の描写がつらかったけど、本作は母ちゃんの存在に救われた。

良作です。
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