鰯

サファリの鰯のレビュー・感想・評価

サファリ(2016年製作の映画)
4.5
なぜ動物を殺す理由を説明しなくちゃいけないんだ?

動物の首や毛皮、剥製を目的としたトロフィーハンティングを追ったドキュメンタリー。欧米からアフリカまでやってきたハンター、狩猟牧場のオーナー、現地のガイドや解体などに関わる労働者を映す。

初めはてっきり、「離れた世界と思っていたものが、実は自分たちと地続きで...」みたいな話かと思ってましたが、本当に一線を越えてしまってるハンターには共感のかけらもないし、倫理観があれば言いそうなことを全然言わない。口では釈明や正当化を図っていても、明らかにハントを娯楽としてやっている。その一方で彼らの理屈には一理あるような気がほんの少しだけする。終盤には諦観の境地に至るような思いでしたが、途中は居心地が悪くなるような映画です。
シリアスな問いかけを提示してますが、撮り方やハンターの態度から笑えてくるような気分にもなります。重たーい映画ではないのでオススメですよ。ドキュメンタリーと敬遠するには勿体ない一本。

興味深かったのは、ハントのガイドや動物の解体を担う労働者(黒人)は一切話さないこと。ただ剥製の前でこちらを見つめていたり、解体した肉を食べていたり、じっとこちらを見つめるだけでこれまた居心地が悪い。解体中には彼らも話はしていますが、翻訳は出ないので何を話してるのかはわかりません。彼らも仕事ですし、ハントとは全然関係のない話をしているのかも?

拍子の抜けたトランペットで始まり、拍子の抜けたトランペットで終わる。監督の作りも意地悪だなと感じる作品でした
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