まっつん

ゲット・アウトのまっつんのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.0
人種差別をテーマにしたホラー。アメリカに2017年に公開された映画では最大の利率を叩き出した本作。

まずザックリ言うと本作は作りが非常に上手いです。至る所でさり気なく先の展開に対しての伏線が張り巡らされており、観終わった後には「なるほどぉ...」という気分になりますね。特に見返してみると序盤の密度たるや半端じゃなくて、登場人物の行動に二重三重に意味が込めてあって実に上手いと思います。また具体的な言及はありませんでしたがあの家が南部であるという事もさり気なく示されていましたね。アイスティーを飲む場面がまさにそれで、アメリカでは南部の人しかアイスティーって飲まないそうです。いろんな歴史的背景があるようですが。

本作が人種差別を扱っているというのは観る前から分かっていましたが、その点に関しても一筋縄では行かないのが本作の面白いところですね。まず週末のパーティーシーンでの白人たちのステレオタイプ丸出しなクリスに対する会話とかを観ると「なんて無神経な人たちなんだ...」と思うわけですよ。このシーンでの白人達が微妙に変な感じがしてシーン全体の違和感を増すという意味で非常に良かったと思います。そして、話が進むにつれこいつらただのヘイターじゃないという事が分かってきます。ここが面白いところで要はこいつら黒人を洗脳してる差別主義者ってだけでなく、度を超した黒人に対する羨望を持ってる人たちであるという事です。この点に関する伏線も序盤から張られまくりなんですが、とにかくそれって超たち悪りぃなって思いましたね。本作に出てくる白人達って右派の白人では無く、白人のリベラルエリートなんですよね。それこそハリウッドとかには沢山いるタイプの人たちだし、「人種差別主義者じゃない。オバマに3期目があったら投票してる。」なんて台詞もありますが、要は「物事の構造はそう簡単じゃない」って事を言ってるのが非常に好感が持てるなと思いました。

その他、ケレン味があるシーン以外の演出なども実に見事で、主人公のクリスは常識的かつ冷静な判断ができる男なので余計に「帰りづらいなぁ....めちゃ帰りてぇけど...」感が出ていますね。これは拉致されてもしょうがないなとスムーズに納得できるようになってる部分が凄くいいと思いました。