emily

オリーブの樹は呼んでいるのemilyのレビュー・感想・評価

オリーブの樹は呼んでいる(2016年製作の映画)
3.4
 20歳のアルマは気が強く扱いにくい女の子だが、オリーブ農園を営む祖父とは強い絆で結ばれている。経営難に陥り、祖父の大切にしていた樹齢2000年の木も売られてしまい、祖父はそれ以来ふさぎ込んでしまっている。アルマはその樹を取り戻そうとスペインからドイツ旅立つ。

 壮大なオリーブ畑、そこには刻まれた歴史と思い出がある。祖父と共に、寄り添い育ってきた樹齢2000年の木。その壮大さを前に田舎の閉鎖的な暮らしを描写する。何かを守るため一番大切な物を奪われてしまった祖父。いたってシンプルな物語であるが、ユーモア満載に描かれており、娘と祖父の関係、親子の関係、恋もあり、特に旅の道中の叔父、同僚とのやりとりが絶品だ。何気ない会話を道中繰り広げ、妻の事や生活の事をつらつらと語り、突然怒り狂ったり、アルマの嘘を見抜くこともできず、怒りをあらわにするが、それでもなぜか憎めない。悩みの怒りの全てがこの道中での穏やかな時間へと繋がり、大きな問題を抱えるアルマにやさしく寄り添うのだ。

 アルマの強い思いはやがて叔父と同僚の心を動かし、大きな運動へと発展していく。一人のシンプルな思い、祖父の樹を取り戻したいという思いは静かに感動を呼び、観客の背中を押してくれる。手を貸すのはアルマの熱意が伝わったからだけでなく、それは自分自身が前に進むためでもあるのだ。何かを成し遂げる事、誰かの力になれた喜びは自分の希望へとつながる。それが祖父の手に渡ったか渡らなかったかが重要ではなく、行動を起こした事が大事なのだ。そうして命は確実に繋がっていく・・
emily

emily