足拭き猫

光の足拭き猫のレビュー・感想・評価

(2016年製作の映画)
3.7
愛する人しか目に入らないゆえに、人間性を失くしてしまったひとたちの物語。殺すことも暴力も振るうこともひとの一部なんだという内容に衝撃を受ける。
井浦新さん、たまに「日曜美術館」を見ても何を考えているのだか今いちつかめないのですが、自分を押し殺した主人公の信之がはまり役でした。
すべてが終わった時の憑き物が取れたような表情、目に宿る「光」。でもこれから先も恐ろしいものを背負って生きていかざるをえないのだろうな。
平田満さんは実直な役しか見たことがなかったのですが、やさぐれの父親を演じていて新鮮でした。
  
舞台が東京の離島で、象徴的に何回も出てくる熱帯性の樹木と汗でびしょぬれになったシャツ。だけど湿度をもう少しだけ感じられたらもっとよかったのにな。樹もロケ地の利島のものなんだろうけど、どうしても屋久杉なんかと比較してしまう自分がいて、巨木ではない人間なんだよね、と思いつつも惜しいという感じが。

音楽はデトロイト・テクノの大御所ジェフ・ミルズ。1920年代のサイレントムービーの「メトロポリス」「月世界の女」などに音楽を付けているとのことでびっくり。