ひでG

光のひでGのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
4.2
素晴らしい!!

河瀬監督の最高作!
いろんな融合がびたりと集約され、極めてクオリティが高い作品だ!

公開時に観たかったけど、DVDで2度続けて観れたので、細かく、丁寧な仕上げの部分がより分かれて良かった!

恥ずかしながら、映画の音声ガイドについて立ち止まって考えたことは一度もなかった。
まして、それをこのように時間と手間をかけて作っている人たちがいることも初めて知った。

主演の二人がとにかく素晴らしい!
「あん」の時も大絶賛!だった永瀬正敏、
今回も凄いっす!
上手な人だから、改めてほめるのもなあ、って思われてる感じがするけと、
この作品で賞をあげてほしい!
もっともっとほめてあげてほしい。

目の動き【正確に言うと目の動かなさ】、
目線の不確かさ、などきめ細かい演技!

もう一人の主役、美佐子を演じた水崎綾女
全く知らない女優さん、
でも、素晴らしい!
仕事上で厳しいことを言われて思わず涙が溢れる場面、
中森の部屋で光を浴びる美佐子、

ふっと見せる表情の中にきらめきを、輝きを持った女優さんである。

さて、本作、永瀬正敏演じる弱視の元カメラマンと音声ガイドを付ける水崎綾女演じる美佐子との恋を描いているのだか、

単純にハンディを持つものと支えるものとの恋物語ではない。
私たちが見慣れてきた甘いストーリー展開ではない。

極めて厳しい、辛い。
でもだからこそ、乗り越えようとする人たちに心から寄り添える映画だと思う。

美佐子の音声ガイドが冒頭流れる。
そのことに無知な私たちは
「へえ、ガイドってこーゆーんだ。大切な仕事だな、美佐子頑張っるな」て思う。

でも、それは全く違う!って、全否定されてしまう!

「障害を持った人のため?」
それは持たざるものの押し付けじゃないのか?

中森はある美佐子の行動に
「あんた、向いてないよ、この仕事!」て切り捨てる。

無知な私たちが「いい音声ガイドだ。」と思った美佐子のラストシーンにあてた言葉が、実は映画を、聴覚障がい者を傷つけていたとは!

何というシビアな仕事なんだ!

美佐子が本当にこの仕事の、障害を持つ、
「大切なものを捨てなくてはいけない人たち」の苦しみや絶望に近付けたのは、

彼女自身も、
「大切なものを捨てなくてはならない存在」として生きていることを自覚できたからなのだ。

この映画の素晴らしさ、凄さは、
それらのことをラストのたった一言に
全て集約しているところだ。

彼女がガイドしている映画の中の
「大切なものを捨てなくてはいけない人たち」とも見事にリンクしていて、
何重にも重なる二重、三重の構造を見てている。

最後の一言に、涙と鳥肌が同時に起きたのだ!

もう一つだけ、この映画の素晴らしさにお付き合いしてください。

河瀬監督作では、自然描写がよく出てくる。「あん」もそうだった。
それが人物の心情をそこはかとなく語っているのだが、
今回のカメラは、それ自体も主役として語るのだ。

二人が見つめ合う間の光

母と美佐子の背中に光

中森の視覚が風景に変わっていく、等等

明らかな、はっきりとした主張をしている描写の数々。何と綺麗で、切ないことか!

素敵な映画と出逢えたこと幸せをまた感じることができました。

ありがとう!
ひでG

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