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gifted/ギフテッドのslowのレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
3.9
自分にとって、とても大事な作品『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督作品ということで鑑賞。これは監督にとって原点回帰となるのかな。地味で真新しさはないけれど真っ直ぐで好感が持てるヒューマンドラマ。普段映画を観ない人にもオススメし易い映画かも。

7歳の女の子メアリーは、先天的に高度な知能を持つ天才少女。その才能を巡って色めき立つ大人達の事情を、まだ人生の選択肢など無いに等しいメアリーは受け入れるしかない。彼女にとって相応しい教育とは何か。必要な幸せとは何かを問う物語。
大人に対して小生意気な口を利く子供と言えば、『雨の日は会えない〜』のジュダ・ルイスが印象的だったけれど、本作のマッケナ・グレイスも負けてはいない。と言うか、彼女無くして本作は成立しなかったのではないかな。アメリカ映画の子役の演技にはいつも驚かされる。らしからぬ熟練ぷりね。子供だろうが何だろうが完全に主張で存在感を示してくるこのスタイルは、是枝映画の自然体を引き出す演出の真逆と言っていいのかもしれない。
クリス・エヴァンスのメアリーに向ける父性と母性を兼ね備えたような優しいまなざしと、時折見せる寂しげな遠い目。脇役として居てくれる安心安定感は、最近の役者の中でもピカイチのオクタヴィア・スペンサー(『シェイプ・オブ・ウォーター』を観た後だったので、より実感)。そして、作品の真ん中でゴロンとくつろぐ猫のフレッドも最高のキャストの一員だった。

今作にはトリッキーな映像表現もなければ、人気アメコミ大作のド派手さもない。大きなスクリーンを嫌った小品のような軽やかさと、情感を丁寧に汲み取る繊細さで、マーク・ウェブ監督は家族の在り方、愛の在り方を、ひとつの青写真として描いてみせた。
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