ノラネコの呑んで観るシネマ

私はあなたのニグロではないのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.5
作家のジェイムズ・ボールドウィンが1979年に書いた未完成原稿をもとに、アフロ・アメリカン史の視点から、アメリカの過去と未来を考察したドキュメンタリー。
フィーチャーされるのは、ボールドウィン自身とマルコムX、メドガー・エバース、キング牧師。
ボールドウィンがアメリカの未来を悲観してからすでに半世紀。
制度的には差別はほぼ無くなり、黒人の大統領だって生まれた。
にも関わらず、暴力的な人種間分断はなぜ無くならないのか。
彼は黒人の感じる憎しみの原点は怒りで、白人は恐怖だという。
理不尽な差別に対する怒りに突き動かされた公民権運動の指導者たちは、恐怖にかられた白人によって皆殺された。
現在でも警官による黒人への暴力は後を絶たず、人種偏見は過去のものとはならない。
それは根底にあるものが、解決されていないからだ。
各年代の映画やTVの引用が面白い。
社会を反映するメディアには、分断の情景が映し出されている。
「手錠のままの脱獄」で白人のジョーカーを見捨てないカレンに、白人は安堵し黒人はガッカリするというのは、日本人も無意識に白人目線で観ていたことに気づかされる。
特徴的なタイトルが、問題の核心だ。
ボールドウィンは言う。
「私は二グロではない」「二グロは白人が作り出した」「何のために?自問するなら希望はある」
なるほど、ここに固定化された分断の本当の理由が見えてくる。
これはアメリカだけの問題ではない。