YUSUKE@アイアンマンの人

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?のYUSUKE@アイアンマンの人のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

走り書きで。原作は本当に素晴らしいのでぜひ一度ご覧ください。1時間ないですし……。

岩井俊二監督もしくは原作のファンは回避されたし。この映画にあなたがたの望むものは何一つ映っていない。原作のカーボンコピーに中途半端な『時をかける少女』の時間遡行・並行世界要素やらプリズムショーもどきのミュージカルシーン(しかも『瑠璃色の地球』が使われる意味が希薄)、『まどか叛逆』の偽物の世界やら川村元気Pのお得意先のトイズが推してる歌手の曲だとかのケバい装飾を施された代物を延々と見せられる苦行が待っている。しかも並行世界ものとしておきながら必要な説明や脱出に至るプロセス(=主人公の成長)は投げたまま偶発的な出来事により終わる。さらには「花火がこんな形なわけがない!」などというセリフを思いついて本当に言わせるか……。んなセリフ書くのは米村正二氏だけで十分なんだよ!>大根+川村 川村Pがターゲットとしている(と同時に見下している)であろうパリピの皆様にだけおすすめする。

ただ、この映画のおかげで『少年たちは花火を横から見たかった』が出版されたため、そこについては感謝しています。

あと試写会場でチャンネーの方が終演後に「金出してみるもんじゃないね。ところで原作って漫画だっけ」と言ってて絶望した(そりゃPも馬鹿にして金太郎飴みたいな適当に人気歌手の曲つけて宣伝の見てくれだけ異様に力入れてってするわ)ので……。とある映画関連のオフ会で「観客のバカさ加減なめんな」とある方に言われ、「いやいやそこまで言わんでも……」と思ったものですが、自分の見識はそうとう甘かったらしいです。
原作はフジテレビで1993年に放送されたテレビドラマ『If もしも』の一篇『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』です。この一篇の出来があまりによかったために再編集して劇場公開までされた、岩井俊二の出世作です。大きな声では言えませんが、某動画サイトにアップされているものがそのまま見られますので、一番美しい世界に耽溺したい方はそちらをご覧になることをおすすめします。

一応新房監督ファンでもあったので、川村Pの介入だけでこんなになるのかと軽くショックを受けています。そして本作、ジュブナイル(子供映画)と称しながら、川村Pがどこかのインタビューで『E.T.』を引用してはいたものの、ジュブナイルものが評価や批評や商売の対象であってもそんなものはこれっぽっちも信じていないということがよく理解できました。なぜならそうした映画は「オトナの力を借りず、子供たちだけで何かを成し遂げる」ことを描くのが基本中の基本だからである。『ドラえもん大長編』『E.T.』は言うに及ばず。近年のオタク向けアニメだって『けいおん!』『アイドルマスター シンデレラガールズ』『リトルウィッチアカデミア』『けものフレンズ』だってきちんとやっていることである。というか『君の名は。』で一応ではあるもののできていたことじゃん。そういうのを無視することは斬新な試みだとか実験演出ではない。ストーリーテリングと登場人物と、はては映画そのものに対する冒涜である。
この作品の作り手たちは「子供たちだけで何かができる」なんてこれっぽっちも信じていない。『リリイ・シュシュ』以降の岩井映画の悪い面だけまねてどうする。困ったことに来年のドラえもん映画の脚本がまさしく彼なのだが、正直この映画の結果を見ると相当不安である。

(ちょっと冷静になったので追記とちょっとした案) この映画にヤダ味を感じるのは、台詞やワンシーンをそのまま中途半端に使う(のわりに「ウンコしたい」などのいらん台詞を入れる)ことで「原作リスペクトしてますよ~。ホラホラどうですかみなさん」という作ってる人の上から目線な自己顕示を感じるからだと思う。あと連れ戻されるシーンで全く同じ構図、インタビューで「『君の名は。』より前からずっと考えてたんですよー」とか。
正直、せっかくプリズムショーじみたミュージカル風のシーンまでやってるんだから『ゴジラ FINAL WARS』(北村龍平)『デビルマン』(那須博之)『愛と誠』(三池崇史)ぐらい、徹底的に原作をパロディの対象にして茶化しまくるおふざけに徹してくれてた――全編ミュージカルにしちゃうぐらい――ほうがずっといいものになった、と僕は思うのである。そのほうが『ぱにぽにだっしゅ』のパロディで復活と出世を遂げた新房監督のテイストにも合ってると思いますし。あと原作からあえて逆行して70~80'sテイストを自由に使わせてあげていれば。