yunumata

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?のyunumataのレビュー・感想・評価

4.5
めちゃめちゃ良かった~!すごかった。何でこれ評判悪いの? もし後半でビックリしているんだったら、『ルーのうた』なんて観たら途中で失神しちゃうんじゃないのか?
ふつう、こういう分岐ループものの物語は、選択を変えるに従ってストーリーが「ゴールへと」近づいていく。けれどこの作品は逆に、どんどんどんどん遠ざかってゆく。抗えない、どうしようもない運命を、とても恣意的で、自己中心的で、独り善がりな……願いと祈りだけで出来上がったものに作り替えてゆく。そのことが、とても、泣きそうなくらい切実で(しかし、登場人物は一切「泣かない」!)、なのにものすごく歪んでいるんだということを全く「隠さない」で描かれる。そこがすごい! ネタバレしないで書くのが難しいけれど……、そこがとても突き抜けていて、かっこ良かった。青春映画版の『マインド・ゲーム』だと思う(さすがにあっちのほうが良いけれど!)。特に終わり方が完璧だった。あれをやる勇気が果たして自分にはあるだろうか……。
そして、これも紛れもない震災映画だった。新房は『まどか☆マギカ』の時に超リアルタイムで向き合った経験があったからかもしれないけれど、ある意味で新海誠よりも、片渕須直よりも、湯浅政明よりも、一歩先を描くことに成功していると思う。『君の名は。』や『ルーのうた』が生者と死者の物語なのだとしたら、『打ち上げ花火』は死者と死者の想像力のお話なんですよね。ああ、次観たら泣いちゃうかも……。劇中に出てくる駅のモデルは、看板には千葉県とあるけれど、実際には気仙沼の(津波で無くなった)歌津駅がモデルだそうです。
個人的にシャフトの作風は苦手なのですが、この作品についてはそれが良い方に作用していたと思う。めちゃめちゃ独り善がりなストーリーなので、こういうチャイルディッシュな映画ばっかりになったらヤバイなーとは思うけれど、これについては許してあげたいナ(チャイルディッシュな叫びだから届くんですよね)。声優も全員良かったです。湯浅の二作品に続く、今年を代表する個性派アニメ映画だと思います。

劇場(2017.08)
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