このレビューはネタバレを含みます
自分はこの映画、最後の疑似裁判シーンが好きであるが、ジョゼフ・ロージーの方は結構込み入っていてわかりにくかった。弁護士のおっちゃんが突然ストーリーにぐいぐい食い込んでくるのも自分は邪魔だと思った。フリッツ・ラングの方が分かりやすかった。
とは言うものの、ストーリーの重要シーンである盲目のじいちゃんが「あ!このメロディーは…!」と気づくところや、犯人の背中にペタンと「M」を印字する極上のシーンはしっかり目を釘付けにさせてくれた。カッコ良いシーンが多かったっすわ。
犯人の自慰の暗喩シーンって、あれカッコ良すぎだよ。紐にフェチを感じているとかも、面白かった。
上映後の大寺氏の講義でジョゼフ・ロージーの方が犯罪者の心理を詳しく検討しているといったような話があって、だから複雑に感じたのかしらんと自分は思った。あと、犯人役もラング版の方がモンスタールッキングだったのに対して、ロージー版はリアルに一般人ルッキングな感じで空恐ろしかった。
しかし、いずれにせよ当時若手だったというジョゼフ・ロージーが既に名作の名を欲しいままにしていた「M」のリメイクを正々堂々と撮ったという事実には素直に脱帽である(赤狩りの影響で仕事が無かったとのこと)。あんた男だよ、ロージー。
それに引き換え、このロージー作の「M」を業界関係者各位の前でボロックソにけなしたというフリッツ・ラング。カッコ悪い!め!