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三度目の殺人のkarmapoliceのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.0
是枝裕和監督2017年作品。勝利にこだわる弁護士の重盛(福山雅治)はやむを得ず、30年前にも殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を担当することになる。解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑。重盛は何度も接見室に通うが三隅は会う度に供述を変え、動機が希薄なことに重盛は違和感を覚え・・・・。

この映画は「人を殺した!この人が犯人だ!」というところから始まる。しかしその後物語を観ていくと、どんどん真相は「藪の中へ」羅生門スタイルなサスペンスと言えようか。この映画を観てどう解釈するか?どう考えるか?鑑賞者に大きく疑問を投げ掛けるタイプの作品。鑑賞者に大きく委ねてくるタイプの映画は、私的には苦手なものが多いが、この作品は少し違ってけっこう良かった。普通のミステリーと違って観れば観るほどモヤモヤするばかり・・・・。

それでもけっこう強く惹きつけられたのは何故だろう。人が人を裁く事、真実を語ることの意味、命の選別について、大きなテーマを深く考えさせられるからだろうか。これだけ翻弄され深く考えていくうちに、犯人は誰(と誰)?動機は何?真実は?と言った疑問が、半ば大きな問題では無いようにさえ思えてくる。重いし爽快なエンタメ性は低いが、人間の持つ闇の部分にも迫っていて観応えはたっぷりだと思う。

法廷が一つのメインの舞台となっているが、最後の裁判では裁判官、検察、弁護士、証人、皆で申し合わせて三度目の殺人をやってしまったようにも観えた。「法廷では本当のことを話す人間なんていない・・・」社会問題のひとつなのかも知れない。

もう一つのメイン舞台である接見室のシーンは毎回凄く観応えがあったと思う。特に役所広司の演技は圧倒的で容疑者三隅の存在が鑑賞者を翻弄しながらストーリー全体を引っ張っていると思う。ラストのガラス越しに映る三隅と重盛の顔が重なるシーンは緊張感のピークだ。「ただの器・・・」印象的なセリフも多かったと思う。重盛は三隅が背負っていた十字架を受け継いでしまったのだろうか・・・・。

どれだけ是枝監督が仕掛けたキーワードに気付けただろうか(笑)

観終わって重たい余韻の中で、これほど他人のレビューを読むのが楽しい作品も多くはないと思う。
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